2---やぶ ページ2
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ちくわを咥えて、はむはむ、と可愛らしく食べる姿が、―――えろい。
やらしい想像が俺の頭をかすめる。
ちくわを食べながら、そいつは言った。
「俺、やおとめひかる」
とっさに名前とは思えなくて「え?」と聞き返す。
漢字はこう、と言って、そいつは割り箸で宙に「八乙女光」と書いた。
「俺はやぶ、薮宏太」
言いながら、そいつがしたように指で漢字を宙に書く。
「ありがとう、やぶ」
おでんが空になると、ひかるの頬はいくらか色味を取り戻し、唇はほんのり桃色になっていた。
「すっごくお腹空いてて……ほんとにありがと」
「ああ」
俺は缶コーヒーを飲み干し、ポイっとゴミ箱に向かって投げた。
からんっ、と硬い音がして缶コーヒーはゴミ箱の中に消えた。
「……やぶ?」
ひかるはためらいがちに、おずおずと俺の名前を呼び、「俺、お金なくって……」とうつむく。
「……代わりに、俺と、やる……?」
ひかるの細い指が小刻みに震えていた。寒さの為だけではない。
「――やだよ」
わざとつっけんどんに答えた。
「ひかるの体は売りもんなんだろ、大事な商売道具なんだろ?おでんなんかと交換できねぇよ」
「やぶ……」
「腹いっぱいになったんだから、しっかり稼いで大人から金をむしりとって来いよ。
俺も、もうひと儲けしてくるから、な」
そう言うと、ひかるは「ありがと」とまた八重歯を見せて笑った。
―――これが、俺とひかるの出会いだった。
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しろくま(プロフ) - 有さん» 有様、蔵之介様も素敵ですね!出来れば蔵之介様にはちぃ様を手込めにして欲しい←病気。情報屋のお話しはまた必ず書きますので、よろしくお願いいたします!懲りずに短編を連載中なので、そちらも。宣伝(笑)コメントありがとうございました! (2018年1月9日 7時) (レス) id: f22c03c885 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - ありこさん» ありこ様、おはようございます。前作、めっちゃ長かったのに、ファンなんて…嬉しくて倒れそうです。ありがとうございます。少し時間をおいて、またこの二人でお話を書きますので、ぜひまた遊びにきてくださいね!きゅんきゅんしていただけるように頑張ります。 (2018年1月9日 7時) (レス) id: f22c03c885 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - まっつんさん» まっつん様、おはようございます!楽しんでいただけて嬉しいです★今回はどーてーを光君に捧げる薮様がメインテーマと言う妄想話です(笑)どうぞこれからもよろしくお願いいたします。コメントありがとうございました! (2018年1月9日 7時) (レス) id: f22c03c885 (このIDを非表示/違反報告)
有(プロフ) - あぁぁぁあー長瀬くん!!なるほど!私の脳内では勝手に佐々木蔵之介さんに変換されてました。笑 とっても面白くて、毎日楽しみにしてました!ありがとうございました!!わがままですが、情報屋の続きをもっと読みたいです(●´ω`●) (2018年1月9日 1時) (レス) id: 074c0f6b92 (このIDを非表示/違反報告)
ありこ(プロフ) - はじめまして、前作からしろくまさんのファンです。2人の出会いからラストまで始終可愛いくてきゅんきゅんしました。とても面白かったです。素晴らしいお話をありがとうございました! (2018年1月8日 23時) (レス) id: 0a1f704509 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しろくま | 作成日時:2017年12月26日 1時