眠り姫【リアル設定】 ページ10
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企画で眠り姫の仮装をすることになった。
やぶは王様役になり、お妃役には大ちゃんを選んだ。
「お妃様になんでヒカを選ばなかったの?」
声を潜めた涼介がやぶに詰め寄る。
「せっかくユートが気をきかせたのに」
視線の先には魔女の仮装の鷲鼻を付けようと、ああでもないこうでもないと奮闘するひかるがいる。
「ひかるはあーゆー仮装好きなんだからいいんじゃね?」
「……マジで言ってんなら叩き切る」
銀紙でできた剣を構える涼介に、やぶは両手を上げて「降参」と軽く答えた。
「ホントやぶちゃんは…、ひかるくんをもっと大事にしなよ」
冷たく言い捨て、涼介はユートのところに行ってしまった。
やぶは黙ってひかるを見やる。
やぶはビロードの小箱を思い出す。
群青色の光沢を湛えた小箱には、プラチナのリングが入っている。
まるで眠り姫のように、それは長いこと自分のカバンの底に忍ばせたままだ。
いつか渡す日が来るだろうか。
ひかるが笑顔で受け取ってくれる日が来るんだろうか。
ひかるは鷲鼻を付け、お妃様のドレスを着た大ちゃんに、「カッケーだろ!」と見せびらかしている。
「カッコいいつーか……ひかるくん、もともと鼻高いから、あんま変わんなくね?」
肩をすくめる大ちゃんにひかるは「マジか!」と天を仰ぎ、みんな一斉にワハハと笑った。
ひかる。
やぶはその光景を眺めながら恋人の名前を心の中で呼ぶ。
そろそろ俺ら、2人のことを考えたって良くないか?
「王冠似合ってるじゃん」
ひかるがニコニコやって来る。
「だろ?」
やぶも作り物の王冠を指で弾い笑ってみせる。
「もう少しなんか飾りをつけようかなぁ」
何気なく呟くひかるに、やぶは衝動的に「ちょっと待ってろ」と、控室に走る。
今がそのタイミングじゃないか、ひょっとしたら。
カバンには、タブレットとスマホ、それにビロードの小箱。
この頃は財布さえ持たないのに、指輪はいつもカバンに入っている。
眠りから覚めた指輪は、きっとひかるの指にピッタリだろう。
「ひかる、これつけて」
小道具みたいに群青色の小箱を渡した。
箱を開けたひかるは目を見開き、それから「これだと物語が変わっちゃうよ?」と涙を拭う。
「これでいいんだよ」
言いながら、ひかるの左の薬指に指輪を嵌めてやる。
「俺の眠り姫は魔女なんだから。……あ、目覚めのキスもいる?」
「バカ、いらねーよ!」
真っ赤になって走り去るひかるの背中をやぶは満足そうに眺めた。
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しろくま(プロフ) - ◇さん» ◇さま、コメントありがとうございます。お褒めいただき嬉しく思います。今日は2人の結婚記念日でもあります。ステキなクリスマスをお過ごし下さい。 (2022年12月25日 7時) (レス) @page49 id: d7e22074ad (このIDを非表示/違反報告)
◇(プロフ) - 最終話のタイトル回収があまりにも美しくて…。執筆お疲れ様でした!次回作も心待ちにしております (2022年12月24日 2時) (レス) @page48 id: 3e4ffd633a (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - 9さん» その涙はひかちゃんのハンドタオルで拭いて差し上げます🥰 (2022年10月24日 13時) (レス) @page44 id: d7e22074ad (このIDを非表示/違反報告)
9(プロフ) - …滂沱……最高です! (2022年10月24日 9時) (レス) @page44 id: a1a90f72f9 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - ちちちさん» ちちち様、ありがとうございます。どうしても薄暗い健吉ひかる…。次は甘々の二人を!!! (2022年7月27日 8時) (レス) @page35 id: d7e22074ad (このIDを非表示/違反報告)
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