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春告げ鳥【縄文のyb×弥生のhk】 ページ27




---hk side



鳥が青い空を飛ぶ。
流れるような翼の軌跡に胸が高鳴った。

塩を煮詰める手を止めて空を見上げると、その黒く尖った翼は確か春を告げる鳥だった。

あの小さな鳥は、春になるとこの海辺に姿を見せる。
冬が終わり、春が来たことを告げる鳥。
遠い山にも春は来て、雪は溶けただろうか。

おれは額の汗を拭い、グツグツ沸き立つ塩を見つめる。

何度も何度も海の水を注ぎ足しながら火を掛け続けると、器の底に塩の塊が煮凝ってくる。



遠い山に暮らすヤブはこの塩を求めてやって来て、おれは山の幸を手に入れるためにアイツを迎えた。

背の高い山の狩人は見事な鹿皮を腰に巻き、鮮やかな朱の文身を目尻に刻んでいた。

近寄り難い鋭い目に、おれなんかの作った塩を気に入って貰えるかと恐る恐る塩を見せると「お前の塩はいい品だな」と優しく笑ってくれた──。

おれらはこうして出会い、春から夏、そして秋、繰り返し山の幸と海の幸を交換した。

そして、いつの間にかおれたちは互いの身も心も貪るように交換するようになっていた。

だが、それは山に雪が積もると終わってしまった。

最後の日、ヤブは「春が来たら必ずお前に会いに来る」と言い、鈍く曇る空を見上げた。

「春を告げる鳥がヒカルの所に来たら、俺が来ると思ってくれ」
「うん、おれはヤブを待ってる──春が来たらヤブに会えるんだって楽しみにしてるからね」

ヤブの暮らす山が冬の間どんなに厳しい暮らしになるのか、おれだって知っている。
それにヤブは戦士だ。
何かあれば戦わなくてはならない。
無事に春を迎えることが出来るのか、誰にも分からないんだ。

おれは山へと戻る狩人の背中を見送った。
ヤブは一度も振り返りはしなかった。



青い空を滑らかに飛ぶ鳥。

ホラ、春を告げる鳥が来たよ……ヤブ!

「──つばめって言うんだよ、あの鳥」

優しい声におれは振り返り、そして春を告げる男の胸に飛び込んで行った。

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しろくま(プロフ) - ◇さん» ◇さま、コメントありがとうございます。お褒めいただき嬉しく思います。今日は2人の結婚記念日でもあります。ステキなクリスマスをお過ごし下さい。 (2022年12月25日 7時) (レス) @page49 id: d7e22074ad (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 最終話のタイトル回収があまりにも美しくて…。執筆お疲れ様でした!次回作も心待ちにしております (2022年12月24日 2時) (レス) @page48 id: 3e4ffd633a (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - 9さん» その涙はひかちゃんのハンドタオルで拭いて差し上げます🥰 (2022年10月24日 13時) (レス) @page44 id: d7e22074ad (このIDを非表示/違反報告)
9(プロフ) - …滂沱……最高です! (2022年10月24日 9時) (レス) @page44 id: a1a90f72f9 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - ちちちさん» ちちち様、ありがとうございます。どうしても薄暗い健吉ひかる…。次は甘々の二人を!!! (2022年7月27日 8時) (レス) @page35 id: d7e22074ad (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:しろくま | 作者ホームページ:___  
作成日時:2021年8月13日 21時

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