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「言葉が雪になるなんて、ヒカルの言葉はきっと混じり気のない、純粋な言葉なんだな」
呪われた自分の唇に、軽く触れた柔らかくて温かいものが、ヤブのそれだと気がついたのは、もう離れてしまったあとだった。
「あーーー!!ヒカル!ソイツとキスしたんだ!?魔法が解けた!!」
突然、甲高い素っ頓狂な叫び声が上がった。
見ると、フサフサの羽飾りのある帽子を被った貴人が飛び跳ねている。
「ヒカルが愛する人からキスされたら、魔法が解けるんだよ!!オレにかかっていた魔法もね!!」
「イノちゃん!?」
「いにしえからの魔法を解く唯一の方法は、愛する人からのキスだよ。
ヒカル、おめでとう。もうヒカルは自由──この城に閉じこもっている必要はないんだ」
絵の中に封じ込められていたイノオは威儀をただすと、優雅にお辞儀をした。
「ヒカル王子、ヤブと申すこの若い狩人とお行きなさいませ。魔法の力は消え、あなた様が
世界は美しいものに溢れております──この者とお行きなさいませ」
「イノちゃん──」
ヒカルの唇からはもう雪が舞うことはなく、代わりに温かな吐息がこぼれ、テーブルの上の蝋燭の炎が揺れる。
「ヒカル、一緒に行こう。俺で良かったら。ほら、俺の名前も呼んでよ。ほら、ヤブってさ」
ヤブが微笑みながらヒカルの手を取った。
「ヤブ……おれ、おれと行ってくれるの?」
「そうだよ。行こう」
だけど、とヤブはふにゃりと笑う。
「だけど、勿体ないから、このご馳走を頂いてから行こうぜ」
──こうして雪の王子は荊の城から消え、暫くしてから代わりに森の中に小さな家が建ち、二人の若者が仲良く暮し始めたそうです。
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しろくま(プロフ) - ◇さん» ◇さま、コメントありがとうございます。お褒めいただき嬉しく思います。今日は2人の結婚記念日でもあります。ステキなクリスマスをお過ごし下さい。 (2022年12月25日 7時) (レス) @page49 id: d7e22074ad (このIDを非表示/違反報告)
◇(プロフ) - 最終話のタイトル回収があまりにも美しくて…。執筆お疲れ様でした!次回作も心待ちにしております (2022年12月24日 2時) (レス) @page48 id: 3e4ffd633a (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - 9さん» その涙はひかちゃんのハンドタオルで拭いて差し上げます🥰 (2022年10月24日 13時) (レス) @page44 id: d7e22074ad (このIDを非表示/違反報告)
9(プロフ) - …滂沱……最高です! (2022年10月24日 9時) (レス) @page44 id: a1a90f72f9 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - ちちちさん» ちちち様、ありがとうございます。どうしても薄暗い健吉ひかる…。次は甘々の二人を!!! (2022年7月27日 8時) (レス) @page35 id: d7e22074ad (このIDを非表示/違反報告)
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