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「食堂はここだけど、なんか……変だった？」
白い髪の男は口元を手で隠して、困ったようにヤブを見やった。
「あっ、お料理はイノちゃんが用意してくれて、その、イノちゃんは張り切って準備してて──」
「あのさぁ、ふつー食堂って言ったら、台所の隅っことか、そういうのかと思うだろ。こんなの、貴族様の晩餐じゃん」
言いながらヤブは美しく掛けられたテーブルクロスをヒラリとめくり、「雪みたいだ」と笑う。
「お前の言葉も雪みたいに白いよな。……お前が“雪の王子”なんだろ？」
見つめられ、ヒカルは息を飲んだ。
ヤブ、気付いてたんだ、おれが──おれが呪われた王子だって。
秘密を暴かれ、急にヒカルの目頭が熱くなる。
泣いたことなんか、この城に閉じ込められて以来、もう何年もなかったのに。
「ご、ごめんなさい……おれ、話すと言葉が雪になって……呪われてるんだ。
気持ち悪いでしょ？でもね、言葉が雪になる他には何にもないから。ホントだよ？」
唇から白い雪が花びらのように舞い、床に落ちては溶けて小さな水滴となっていた。
同じように、ヒカルの瞳から涙が溢れて頬を濡らす。
ヤブは思わず手を伸ばし、その涙を親指で拭った。
ハッとしたように顔を上げたヒカルの頬を、ヤブの両手が不器用な優しさで包み込む。
──あったかい。ヤブの手。
ずっと前に塔から見かけた、新雪が陽の光にきらめく中、橇を走らせるヤブの姿を思い出す。
馬を巧みに操り、橇ははまるで“自由”の象徴のように滑っていた。
「んー、俺はただの狩人だから、呪いとか、魔法とか、よくわかんねーけど、ホラ、めちゃくちゃ寒いと俺の言葉も雪っぽくなるぜ？
ふーって息を吐くと、氷の粒みたいになる時あるもんな」
厳冬の朝、凍えながら狩りに出ると、晴れた風のない日には息が凍り、小さな氷の粒となって宙を舞う。
「氷の粒が朝日に当たるとキラキラして、まぶしいくらい輝くんだ。スッゲェ綺麗でさ。そんな中で橇を走らせると気持ちいいんだぜ〜」
「ヤブ……怖くないの？おれ、みんなと違うよ？」
また唇から雪が舞った。
おずおずと上目遣いで尋ねるヒカルに、ヤブは目を細めて首を横に振る。
「怖くないよ。ところで、お前なんて名前？」
「ヒカル──」
「ヒカルかぁ、いい名前」
頬を包み込んだヤブの手が、そっとヒカルの唇をなぞった。
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しろくま(プロフ) - ◇さん» ◇さま、コメントありがとうございます。お褒めいただき嬉しく思います。今日は2人の結婚記念日でもあります。ステキなクリスマスをお過ごし下さい。 (2022年12月25日 7時) (
レス) @page49 id: d7e22074ad (このIDを非表示/違反報告)
◇(プロフ) - 最終話のタイトル回収があまりにも美しくて…。執筆お疲れ様でした！次回作も心待ちにしております (2022年12月24日 2時) (レス) @page48 id: 3e4ffd633a (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - 9さん» その涙はひかちゃんのハンドタオルで拭いて差し上げます🥰 (2022年10月24日 13時) (レス) @page44 id: d7e22074ad (このIDを非表示/違反報告)
9(プロフ) - …滂沱……最高です！ (2022年10月24日 9時) (レス) @page44 id: a1a90f72f9 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - ちちちさん» ちちち様、ありがとうございます。どうしても薄暗い健吉ひかる…。次は甘々の二人を！！！ (2022年7月27日 8時) (レス) @page35 id: d7e22074ad (このIDを非表示/違反報告)
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