アツアツを召し上がれ【ybhk】

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おれはまたコーヒーを飲んでから、メールに添付されたゲストさんについての資料を読む。

やぶこうた……サッカーのことは何にも知らないおれは、その名前は見たこともなくて「ヤブ」って名字もお蕎麦屋さんと同じだって思い浮かんだくらい。


おれと同じ年生まれだけど、やぶさんは学年だと1つ上。
有名大学を出て、サッカーのことを書くライターさんなんだって。

頭良いんだ、すごいね。

“オヒルナンダヨ”と同じ局の“サッカーサマリー!”って番組の司会をしていて、その番宣でゲスト出演することになったみたい。


＜──海外サッカーをテレビ観戦しながら手づかみで食べることができ、それでいて料理初心者でも作れるものをリクエストします。
夜に観戦しているので、ヘルシーだと嬉しいです＞


そのリクエストに、おれは思わずクスクス笑った。

添付された宣材写真じゃ細身のスーツが似合う、シュッとしたイケメンだけど、「手づかみ」ってワードから、普段はズボラで「The 独身男性」って感じだろうなって思った。

きっと、着古したトレーナーなんか着て、だらしなく胡坐をかいて缶ビール片手にして……真夜中にテレビでサッカーを熱心に観戦してるのかな。
休憩時間にふとお腹がすいて、いまさらコンビニも面倒でカップラーメン作って食べたりするけど、うっかりおつゆをこぼしちゃって、がっくり肩を落としたりして……。

そんなカレシがいたら、どんなお夜食を出してあげようかな。

海外サッカーってことは、外国なんでしょ？
洋風がいいよね？


ふわふわと妄想して、慌てて頭を振った。

ダメダメ。こんなこと考えてたら好きになっちゃう。

でも……やぶさん、カッコいい……。

おれ、スーツの似合うひとってドストライクなんだよ。
だけど、こんなカッコよくて素敵な人が、おれみたいなワケわかんないオトコを好きになること、ぜったいにない。

お仕事でご一緒できるだけでもラッキーって思わないとね。

さあ、お仕事お仕事。



おれはコーヒーを飲み干して、ADさんからのメールに了解した旨の返信をしてから、レシピを考えはじめた。

レシピを考えるのはいつだって楽しいけど、いつも以上にワクワクしていたのは今朝のコーヒーが美味しかったせいだよね──きっと。

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