epilogue ページ48
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---yb side
「ご飯できたけど、お仕事の進み具合はどう?」
ノックがあって、ドアの隙間からひかるが控えめに顔を覗かせる。
ちょうど明日締め切りの原稿を書き終え、俺はグーンと伸びをした。
「今終わったところだよ、ひかる〜、ナイスタイミング!あー、腹減った!」
「お疲れ様、やぶ」
いつもなら、ひかるは夕飯の声をかけたら、俺の仕事を邪魔しないようにそそくさとキッチンに戻って行く。
なのに、ひかるはモジモジとエプロンの裾をいじっている。
その理由はすぐ分かったけど、意地悪したくなって、すぐに答え合わせはしてやらねぇ。
「ひかる、今夜のメニューを当ててみせようか?当てたら俺の言うこと聞いて貰うからな」
回転椅子でクルリとまわった。
「答えは──はんぺんサンド、だろ?」
ひかる頬を染めて、「記念日、覚えてたんだ?」とキラキラ目を輝かせる。
普段、俺は《記念日なんか知らん》みたいなスタンスを装っている分、感動はひとしおってもんだ。
「あったり前だろーが。今日は俺とひかるが初めて会った日で、初めて食べたのがはんぺんサンドだろ?それから、俺ら初めてチューして、初めて……」
言い募ろうとした俺に、ひかるは「もういいから早くリビングに来て!」って叫ぶと、ネコみたいに素早く出て行ってしまった。
──俺とひかるはあれから色々あって、今は一緒にオンシの公園前のマンションで暮らしている。
ひかるはお料理系YouTuberヒカリンとして活動しながら、最近はイラストレーターとしても売れっ子になっている。
フワフワした脱力キャラがウケて、子ども向け番組のキャラクターデザインなんかもしてんだ。
俺は相変わらず“サッカーサマリー!”の番組を続け、チマチマとスポーツ雑誌に原稿を書いている。
それから、ひかるに教えて貰って、サッカーを夜中に語る《やぶこうたの夜分遅くに》なんて動画を上げて、結構人気になってんだ。
リビングに行くと、キャンドルの炎が優しく揺れて、テーブルにはご馳走が並んでいた。
もちろん、思い出のはんぺんサンドもある。
ひかるがキッチンから照れ臭そうに微笑んでいる。
「やぶ、アツアツを召し上がれ」
───おしまい
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しろくま(プロフ) - Qさん» Q様、あの相合い傘をどうにかお話に入れたくて、こうなりました!アツアツの2人はいつまでもアツアツのままです!😊 (2022年1月24日 19時) (レス) id: d7e22074ad (このIDを非表示/違反報告)
Q(プロフ) - キャーーー!ご結婚おめでとうございます!! (2022年1月24日 8時) (レス) @page50 id: a1a90f72f9 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - べすさん» べす様、ご覧いただきありがとうございます。今まで書いた中では一番糖度の高いひかにゃを目指していたので可愛いとお褒めいただけ、嬉しい限りです。そして夜分遅くに、我慢出来ずぶっ込みました。実現する日が来ますように。 (2022年1月18日 22時) (レス) id: d7e22074ad (このIDを非表示/違反報告)
べす(プロフ) - しろくま様*おひさしぶりです。完結おめでとうございます。読ませていただきました。応援したくなるくらいふたりが可愛くて面白かったです。“夜分遅くに“を入れてくるしろくま様の機動性はさすがですネ^^。 (2022年1月17日 23時) (レス) id: d251bf862e (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - みるみるみるきーさん» みる様、チュー迄で終わってしまった自分が悲しい…次は必ずベッドにたどり着くよう頑張ります。夜分遅くに、リアルで実現する日を待ち焦がれています!最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。 (2022年1月17日 10時) (レス) id: d7e22074ad (このIDを非表示/違反報告)
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