episode13 ページ42
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やぶと肩を並べて夜の街を歩く。
ラーメンの麺の太さとスープの絡み方なんてマニアな話、やぶとするなんて思ってもみなかった。
一応、お料理のことならおれの方がやぶより詳しい。
ラーメンにまつわる豆知識を披露すると、「さすがだなぁ」って褒めてくれるから、おれの心はフワフワ浮き立つ。
──やぶの優しさに、おれのこと、ちょっとでもいいなって思ってくれてるんじゃないかって、勘違いしちゃう。
おれはやぶの顔を見ないようにして、前を向いて歩いた。
だって、あの柔らかい笑顔を見たら、おれ、うっかり勘違いしちゃうもん。
金曜日の宵の口、人通りは多くてみんな楽しそう。
男同士の二人連れだって珍しくないよ。
だけどおれは……。
すれ違う男の子は、女の子の手を優しく繋いでいる。
なんで、おれ、男の人を好きになっちゃうんだろう。
いのちゃんが言ってた。
やぶは《『可愛い』女の子が好き》って。
大ちゃんといのちゃんみたいに、男同士でも素敵なカップルがいるって知ってるけど──それは二人が特別な絆で結ばれているから。
おれがもし可愛い女の子に生まれていたら、やぶを好きになっても許されたのかな。
もちろん今のおれ、とっても幸せだよ。
だけど、隣を歩くやぶが、もしもおれを──。
「ここだよ。お勧めのラーメン屋」
はっと顔を上げると、赤い提灯のぶら下がるラーメン屋さん。
ここって。
「《ラーメンきたみつ》……」
何度も来たことがある小さなラーメン屋さん。
豚骨ベースのスープがとっても美味しいの。
「ひかるも知ってたんだな」
やぶはニコニコしながら暖簾を持ち上げ、おれをお店の中に誘う。
「らっしゃい!」
元気な声が迎えてくれた。
キリリとハチマキを巻いた大将は、おれとやぶが並んで入って行くと、「二人、今日の“オヒルナンダヨ”に出てたよな?!」って笑う。
「おう!昼はひかるにウマイもんを作ってもらったからな、今度は俺が《きたみつ》の豚骨を食わせてやりたくてさ」
やぶはカウンターに座りながら、お冷やを出す大将に砕けた口調で答える。
「キタヤマは高校の先輩なんだ」
「敬語使えって言ってんだけど、コイツ全然言うこと聞かねぇからな」
そんなやり取りも男同士の気取りのない感じで、おれの心の底にある……やぶが好きって気持ちが後ろめたい。
フツーにしなきゃ。
「おれ、特製ラーメンと餃子セットにする!」
お冷やをぐっと飲み干し、おれは勢いよく注文した。
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しろくま(プロフ) - Qさん» Q様、あの相合い傘をどうにかお話に入れたくて、こうなりました!アツアツの2人はいつまでもアツアツのままです!😊 (2022年1月24日 19時) (レス) id: d7e22074ad (このIDを非表示/違反報告)
Q(プロフ) - キャーーー!ご結婚おめでとうございます!! (2022年1月24日 8時) (レス) @page50 id: a1a90f72f9 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - べすさん» べす様、ご覧いただきありがとうございます。今まで書いた中では一番糖度の高いひかにゃを目指していたので可愛いとお褒めいただけ、嬉しい限りです。そして夜分遅くに、我慢出来ずぶっ込みました。実現する日が来ますように。 (2022年1月18日 22時) (レス) id: d7e22074ad (このIDを非表示/違反報告)
べす(プロフ) - しろくま様*おひさしぶりです。完結おめでとうございます。読ませていただきました。応援したくなるくらいふたりが可愛くて面白かったです。“夜分遅くに“を入れてくるしろくま様の機動性はさすがですネ^^。 (2022年1月17日 23時) (レス) id: d251bf862e (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - みるみるみるきーさん» みる様、チュー迄で終わってしまった自分が悲しい…次は必ずベッドにたどり着くよう頑張ります。夜分遅くに、リアルで実現する日を待ち焦がれています!最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。 (2022年1月17日 10時) (レス) id: d7e22074ad (このIDを非表示/違反報告)
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