episode12 ページ39
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ローテーブルにうつ伏せて寝てしまったゆうとの背中にタオルケットをかけてやる。
ふんわり柔らかな薄い黄色のそれは、ソファの端にキチンと畳んであったものだ。
ひょっとしたら、このソファでひかるがお昼寝するときに使ってるんだろうか。
しまった、ひかるのお気に入りだったか!
そう気付くと、直ちにタオルケットを取り返してやりたくなったが、グッと我慢する。
キッチンから鍋か何かを洗いながらこちらを見ているひかるが、フンワリ柔らかく微笑んでいたから。
やべ、可愛い。
「おい山田、ゆうとをどうする?こんなデカイ奴連れてタクシーに乗せるの無理だろ?」
さりげなく言いながら、山田に向かって俺は念を送る。
〈頼ム、ひかる ト 2人ニ シテクレ》
ひかるの背後にいた山田は小さく頷いて、それから顎先でゆうとを指す。
〈了解シタ。代ワリニ、オレ ト ゆうと ヲ 2人ニ シロ》
山田からの念を受けた気がして、俺は一芝居打つことにした。
飲み足りないことを理由に、ひかるを外に誘うと、案の定、「え?ゆうとを一人には出来ないよ」と、困惑してまごついている。
本当にひかるは優しいんだな。
上着を羽織り、スマホと財布をケツポケットに押し込む。
出かけるぞって、無言のアピールだ。
「ゆうとは山田に任せとけ」と答えると、つかさず山田が「おっけ」なんて軽く請け合う。
……初めは、俺とゆうとが示し合わせて、それぞれの想い人にアタックをかけるつもりだったのに、いつの間にか俺は山田と組んでいた。
さすが変幻自在のフェイントを得意とする天才ドリブラーだ。
しかも、山田は以前に貸してやると約束をしていたDVDを理由に、俺に家に戻れと言う。
──つまり、俺にひかるを連れて家に帰る口実を作ってくれているわけだ。
絶妙なナイスパス、あとはボールをゴールに流し込むだけだぞ。
落ち着いていけ、俺。
心の中で山田のフォローに感謝しつつ、当然みたいにサッサと玄関に向かう。
靴箱の上には、ガラスの小瓶にいい匂いのする竹串みたいな棒が刺さっている。
アロマ……なんとかってやつだ。
その隣には、でっかいクマの縫いぐるみに抱きついた少年の写真が飾ってある。
子どもの頃のひかる。
純な瞳のひかるは、むちゃくちゃ可愛い。
事務所に写真送ってたら、間違いなく合格していたに違いない。
だけど、その表情は天真爛漫って感じじゃないくて、少しだけ寂しげに見えた。
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しろくま(プロフ) - Qさん» Q様、あの相合い傘をどうにかお話に入れたくて、こうなりました!アツアツの2人はいつまでもアツアツのままです!😊 (2022年1月24日 19時) (レス) id: d7e22074ad (このIDを非表示/違反報告)
Q(プロフ) - キャーーー!ご結婚おめでとうございます!! (2022年1月24日 8時) (レス) @page50 id: a1a90f72f9 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - べすさん» べす様、ご覧いただきありがとうございます。今まで書いた中では一番糖度の高いひかにゃを目指していたので可愛いとお褒めいただけ、嬉しい限りです。そして夜分遅くに、我慢出来ずぶっ込みました。実現する日が来ますように。 (2022年1月18日 22時) (レス) id: d7e22074ad (このIDを非表示/違反報告)
べす(プロフ) - しろくま様*おひさしぶりです。完結おめでとうございます。読ませていただきました。応援したくなるくらいふたりが可愛くて面白かったです。“夜分遅くに“を入れてくるしろくま様の機動性はさすがですネ^^。 (2022年1月17日 23時) (レス) id: d251bf862e (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - みるみるみるきーさん» みる様、チュー迄で終わってしまった自分が悲しい…次は必ずベッドにたどり着くよう頑張ります。夜分遅くに、リアルで実現する日を待ち焦がれています!最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。 (2022年1月17日 10時) (レス) id: d7e22074ad (このIDを非表示/違反報告)
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