… ページ37
.
お皿を食器棚に片付けてくれながら、山田は「これだからアイツは駄目なんだよな。昔っからそうなんだよ。肝心な時にさぁ……詰めが甘いって言うか……」と頬っぺたを膨らませる。
アイツ……つまり、ゆうとはローテーブルにうつ伏せたまんま、すーすー寝息を立ててる。
──山田が特製の肉じゃがを運んで行った時には、ゆうとは寝ちゃってたの。
だからアツアツの肉じゃがは、結局3人で食べちゃった。
やぶも「この肉じゃが、めちゃくちゃウマイのにな〜、ゆうとは食べらんなくて残念だなぁ」って、笑ってた。
その優しい目は、山田の気持ちも、ゆうとの気持ちもわかってるって感じた。
「ゆうとは見た目ちょーイケてるし、頭いいし、仕事できるんだけど、なーんか残念なんだよ。
現役の時も、代表に選ばれた日に骨折したんだよ?しかも階段から落ちて。アスリートとしてあり得なくね?」
ぶつぶつ言う山田の声がリビングのやぶにも届いたみたいで、「そんなこともあったなぁ〜」って、お地蔵様みたいに目を細くして笑ってる。
「まぁ、その残念な所がゆうとの良さだな」
そうフォローして、ゆうとのワイシャツの広い背中にそうっとタオルケットを掛けてあげてる。
こんなさりげない優しさ、見てるだけでキュンとしちゃう。
おれは平気な顔してお鍋を片付けていたけど、ついやぶに見とれちゃって。
キッチンに顔を向けたやぶと目があって、ハッと我にかえる。
やぶに変なヤツだって思われなかったかな?
気持ち悪いって思われたらやだな。
ごしごしお鍋を磨くおれなんかより、幸いやぶはすっかり寝込んでいるゆうとのことが心配みたい。
「おい山田、ゆうとをどうする?こんなデカイ奴連れてタクシーに乗せるの無理だろ?」
確かに、どう見ても180cmくらいあるゆうとをタクシーに乗せるのは大変そう。
ウチに泊めても構わないんだけど……。
綺麗になったお鍋を水切り籠に乗っけた時だった。
「ひかる、俺、飲み足りねーから、ちょっと出かけようぜ。ゆうとはこのまま寝かしてやれよ。疲れてんだろ」
って言いながら、やぶはもう立ち上がって上着を羽織ってるの。
「え?ゆうとを一人には出来ないよ」
「山田に任せとけばいいだろ。なぁ?山田」
ってことは、やぶとおれの二人きりでお出かけするつもりってこと?!
──行きたい!
でも、人んちで留守番なんて、そんなの山田も困っちゃうよね。
そう思って山田を見ると、意外にも「おっけ」って片手を上げていたの。
319人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
しろくま(プロフ) - Qさん» Q様、あの相合い傘をどうにかお話に入れたくて、こうなりました!アツアツの2人はいつまでもアツアツのままです!😊 (2022年1月24日 19時) (レス) id: d7e22074ad (このIDを非表示/違反報告)
Q(プロフ) - キャーーー!ご結婚おめでとうございます!! (2022年1月24日 8時) (レス) @page50 id: a1a90f72f9 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - べすさん» べす様、ご覧いただきありがとうございます。今まで書いた中では一番糖度の高いひかにゃを目指していたので可愛いとお褒めいただけ、嬉しい限りです。そして夜分遅くに、我慢出来ずぶっ込みました。実現する日が来ますように。 (2022年1月18日 22時) (レス) id: d7e22074ad (このIDを非表示/違反報告)
べす(プロフ) - しろくま様*おひさしぶりです。完結おめでとうございます。読ませていただきました。応援したくなるくらいふたりが可愛くて面白かったです。“夜分遅くに“を入れてくるしろくま様の機動性はさすがですネ^^。 (2022年1月17日 23時) (レス) id: d251bf862e (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - みるみるみるきーさん» みる様、チュー迄で終わってしまった自分が悲しい…次は必ずベッドにたどり着くよう頑張ります。夜分遅くに、リアルで実現する日を待ち焦がれています!最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。 (2022年1月17日 10時) (レス) id: d7e22074ad (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ