アツアツを召し上がれ【ybhk】

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「こーた！」

インタビューが終わったんだろう、ちねんくんが手を大きく振る。
その隣では腕組みした山田くんが不機嫌そうな目でこっちを見てた。


「あ、インタビュー終わったみたいだな、紹介するよ。ひかる、行こう」

ごく自然に名前を呼んで立ち上がり、手を差し出してくれる。

午後の陽射しを背にしたやぶさん……やぶの笑顔がキラリと眩しい。
おれは目をつむって、差し出しされた手を握った。

あったかい。おっきな手。

今だけ、今だけだから、手を繋いでもいいよね？

立ち上がったおれが目を開けると、やぶは｢ひかるっていい名前だよな｣って優しいの。

｢これからよろしく、ひかる｣


今だけって思ってたのに──やぶは〈これから〉を軽々と飛び越え、おれの硬い手を握ったまま歩きだした。



｢ゆーりはひかるのこと、知ってるんだよな？｣

当然”知ってる“って返事があるって想像してたのに、ちねんくんは肩をすくめる。

ちっちゃくてもさすがアスリート、その肩はガッシリしてた。

｢ボクが知ってるのはお料理系YouTuberのヒカリン。
〈ひかる〉のことは知らないから、ちゃんと紹介してよ｣

そう言われて、やぶは｢ナルホド｣と小さく呟く。

｢ヒカリンの本名、ひかるだよ。今日番組で料理作って貰ってさぁ〜、むちゃくちゃ旨かったんだよ。
山田も料理するじゃん？話し、合うんじゃねーかなーって連れて来た｣

腕組みしたままの山田くんは｢はぁ？｣って眉をしかめた。

｢え？なに、じゃあ、やぶちゃん、ヒカリンと初対面だったわけ？初対面の人を、そんな理由でここまで連れて来たわけ？｣

鋭く詰め寄られてるのに、やぶはフニャフニャ笑ってて、｢だってさー、ゆーやが良いって言うからさぁ｣とのんびりしてる。

おれの方がハラハラしちゃう。

｢ヒカリン、こっちの口が悪いのが山田だよ。日本で一番のストライカー。そんで、その相棒のちねん｣


すとらいかー。

意味わかんなかったけど、頭の中で赤と水色のストライプの絵柄がワーッと沸き上がった。

──赤、きっと山田くんに似合う。
さっきはほっぺたりんごみたいだったけど、イチゴの赤もいいな。
水色はソーダ。
イチゴをソーダに浮かべて……うん、イチゴアイスのソーダフロート、可愛いなぁ。


｢……ひかる？｣

チョンと腕をつつかれ、我に返る。
やぶが少し不思議そうにおれの顔を覗き込んでた。

わっ、近いっ！！

びっくりしてぴょんっと跳びはねたら、山田くんがプッ、と吹き出した。

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