episode9 ページ27
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---hk side
「──アンタやぶくんの何?」
腕組みした〈王子様〉が唇を尖らせている。
「何って……」
やぶさんは今日初めて会って共演した人で……友達の友達だよ。
それから、おれが──やぶさんのこと、好きって、勝手に思ってるだけ。
でも、どう答えたらいいかわかんない。
「アンタ、やぶくんのこと好きなんだろ?」
「……!!」
〈王子様〉は前を向いたままサラリと言って、目を剥くおれに「ちょろっ」と鼻先で嗤った。
でもそれはおれをバカにしてるって感じじゃないの。
なんていうか、お気に入りのおもちゃを取られて拗ねてる子ども?みたいな?
「えっとね、おれ、アンタじゃなくて、ヒカリンだよ」
ちょびっとだけ悔しくって訂正してみた。
「ああ、ちぃが言ってたな。ヒカリンだっけ」
その視線の先はやぶさんとちねんさんに……ううん、違う違う。
やぶさんの後ろにいる、背の高いスーツの人を見てるんだ。
黒髪に紺の地味なビジネススーツ、遠目からでもイケメンだってわかる。
きっとこのチームの偉い人なんだろうな。
「〈王子様〉はあのスーツの人が好きなんだね……。おれとおんなじ、片想い?」
「はぁ?!」
今度は〈王子様〉が目を剥く番だった。
「おれがやぶさんのことが好きってすぐに気がついたのって、〈王子様〉も恋してるからでしょ」
〈王子様〉は長い溜め息をついてからキッと眉を上げ、「オレは王子様なんかじゃねぇ!山田涼介だからな!」と言い捨て、風のように駆け出して行った。
そのほっぺたがりんごみたいに赤いの。
……あれって、怒ってるんじゃないよね。
照れてるんでしょ?
駆け出して行った〈王子様〉は、やぶさんとちねんくんと合流したあと、何やら賑やかに笑っている。
そのくせ、すぐ側にいるスーツの人には目もくれないの。
不自然だよ、意識し過ぎてるよ。
おれはクスクス笑いながら芝生に座って膝を抱えた。
ふんわりした芝生は少しだけヒンヤリしてる。
最高級のシルクみたい。
好きな人に好きって言えない恋。
おれもいくつかそんな恋を飛び越えてきたんだ。
──運命のひと。
それがおれにはやぶさんで、〈王子様〉にはあのスーツの人だったらいいのにな。
そう願いながら〈王子様〉たちの楽しそうな様子を眺めた。
やぶさんも目を細くして笑ってる。
おれを連れ出す時にみせた強引な瞳が嘘みたい。
優しい顔にまたキュンとしちゃう。
あぁ、やっぱりおれはやぶさんのこと、好きだよ……。
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しろくま(プロフ) - Qさん» Q様、あの相合い傘をどうにかお話に入れたくて、こうなりました!アツアツの2人はいつまでもアツアツのままです!😊 (2022年1月24日 19時) (レス) id: d7e22074ad (このIDを非表示/違反報告)
Q(プロフ) - キャーーー!ご結婚おめでとうございます!! (2022年1月24日 8時) (レス) @page50 id: a1a90f72f9 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - べすさん» べす様、ご覧いただきありがとうございます。今まで書いた中では一番糖度の高いひかにゃを目指していたので可愛いとお褒めいただけ、嬉しい限りです。そして夜分遅くに、我慢出来ずぶっ込みました。実現する日が来ますように。 (2022年1月18日 22時) (レス) id: d7e22074ad (このIDを非表示/違反報告)
べす(プロフ) - しろくま様*おひさしぶりです。完結おめでとうございます。読ませていただきました。応援したくなるくらいふたりが可愛くて面白かったです。“夜分遅くに“を入れてくるしろくま様の機動性はさすがですネ^^。 (2022年1月17日 23時) (レス) id: d251bf862e (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - みるみるみるきーさん» みる様、チュー迄で終わってしまった自分が悲しい…次は必ずベッドにたどり着くよう頑張ります。夜分遅くに、リアルで実現する日を待ち焦がれています!最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。 (2022年1月17日 10時) (レス) id: d7e22074ad (このIDを非表示/違反報告)
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