アツアツを召し上がれ【ybhk】

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どこかソワソワしたまま"オヒルナンダヨ"は終わった。

「ありがとうございました、またお願いいたします」

演者さんたちや、スタッフさんに挨拶していると、「やぶくん、お疲れ〜！」と聞きなれたイケボが呼んだ。

見ればスタジオの隅でゆーやが手を振っている。

長めの茶髪、キラリと光る銀のピアス、洒落たダメージジーンズの長い脚、どこからどう見てもイケメン俳優って風情のゆーやだが、ヤツは俺の出ている"サッカーサマリー！"のディレクターだ。


「ゆーや、どした？」
「どしたって……ちゃんとやぶくんが番宣できたか見に来たんだぜ。
まぁ、85点ってとこだったな」
「厳しいなぁ〜」

天を仰ぐと、ゆーやはニヤリと口角を上げる。

「やぶくんさぁ、料理コーナーの時、ずーっとヒカリンに見とれてただろ」
「は？そうか…？」
「好みだった？」


──好み？


「まぁ、はんぺんもチーズも大葉も、俺の好物だけど？」

真面目に答えたにも関わらず、ゆーやはやれやれと肩を竦め、「そーいう所がやぶくんの良いとこだけど、鈍すぎるのも問題だねェ」と嘆息した。

意味がわからず黙りこむ俺に、ゆーやは苦笑して話題を変える。


「ちょうどこれから湘南テレマーレの取材に行くけど、やぶくん、どう？」
「まじ？同行出来んの？」
「単に同行だよ？やぶくんはロケに出演予定じゃないから、ギャラはないよ〜」

Jリーグの強豪チーム、湘南テレマーレは山田選手と知念選手のちっこいツートップが大活躍中で、特に山田選手はスペインのチームが目を付けていると噂されている。

ギャラが発生しなくてもぜひ行きたい。

「着替えてくっから、ちょっと待ってくれよ！すぐ行くからさ」

ロケ車両用の駐車場で落ち合うことにしてゆーやと別れ、俺は急いで楽屋に向かった。


この時の俺はすっかりヒカリンのことを忘れていた。
廊下で、「やぶさん」とヒカリンに声をかけられるまでは。


ヒカリンがいやに生真面目に「今日はありがとうございました」と頭を下げていた。

銀の髪がさらりと揺れる。

「いや、こちらこそありがとうございました。ホントにお世辞抜きで旨かったです。
はんぺんもチーズも大葉も、俺の好物で」

そこまで言ってから、ふとヒカリンの魔法のような指先に目が吸い寄せられる。


女の子みたいに小さくない。
爪だってマニキュアなんかで飾ってない。

だけど、その繊細な指を見ると、ヒカリンがキレイで清潔な心をもっているってわかる。



……可愛い。

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