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「ちょ、やだな、二人とも〜!こ、恋なんてしてないし。次のゲストさんのレシピを考えてるだけだから!」
おれは焦って否定した。
でも、胸の奥の柔らかなところがチクッと痛んだ。
嘘言っちゃってる。
ほんとは──わかってた。
おれ、やぶさんに会ってもないのに恋しちゃってるって。
「で?そのゲストって誰?」
いのちゃんがほっそりした指先でワイングラスを弄びながらおれに目を向ける。
……いのちゃんは白いほっぺたをして、唇はマカロンみたいに可愛らしい。
髪もツヤツヤ、指先まで抜かりなくキレイ。
アイドルなんだから、キレイなのは当然。
でも、いのちゃんの「キレイ」は姿かたちだけじゃない。
こんな風にキラキラしてるのは、いのちゃんには大ちゃんって言う素敵なカレシがいるからだよね。
それに比べて、おれはゴツゴツした指をしてるし、可愛くないし……こんなおれが会ったこともないやぶさんに恋してるなんて、ホント恥ずかしい……。
「えっと…次のゲストはね、やぶさんって言う、サッカーライターさん」
恥ずかしさを隠そうとして、おれはわざと元気に答えた。
「えー?サッカーって足でボールを蹴る…」
「いのちゃんっ!そこじゃないだろ?!」
ボケたいのちゃんの脇腹に、大ちゃんが肘鉄砲を食らわしてから、「やぶくんね、オレらと友達だよ」とニコニコする。
思いもよらない言葉におれの手からフォークが滑り落ち、カチャンと音を立てた。
「やぶくん、あんまり言ってないけど、ジュニアで活躍してたんだよ。
いのちゃんは同期だったよね?」
「まーね。アイツ、サッカーライターになるって言って中学卒業と同時にジュニア辞めてさぁ〜」
しばらく二人は思い出話に花を咲かせ、それからいのちゃんが「良いこと教えてあげる」とニンマリと口角を上げる。
「やぶはトマトが苦手」
まるで呪文みたいに唱え、いのちゃんはパチンとウインクした。
「え?でも、苦手なものはなしって資料にはあったよ」
「アイツさぁ、カッコつけて弱味を見せたがらないの。不器用なダメ男のくせに。
それに比べて、大ちゃんはカッコなんかつけられないもんねー」
「オレだってカッコくらいつけますけど?!」
また二人がキャッキャッとふざけ出した。
こんな風にふざけあってるけど、二人がおれのことを心配しているってわかる。
ありがたいよね、友達って。
「やぶさんのこと、もっと教えて?」
素直に言ったおれに二人は「任せて!」って笑ってくれた。
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しろくま(プロフ) - Qさん» Q様、あの相合い傘をどうにかお話に入れたくて、こうなりました!アツアツの2人はいつまでもアツアツのままです!😊 (2022年1月24日 19時) (レス) id: d7e22074ad (このIDを非表示/違反報告)
Q(プロフ) - キャーーー!ご結婚おめでとうございます!! (2022年1月24日 8時) (レス) @page50 id: a1a90f72f9 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - べすさん» べす様、ご覧いただきありがとうございます。今まで書いた中では一番糖度の高いひかにゃを目指していたので可愛いとお褒めいただけ、嬉しい限りです。そして夜分遅くに、我慢出来ずぶっ込みました。実現する日が来ますように。 (2022年1月18日 22時) (レス) id: d7e22074ad (このIDを非表示/違反報告)
べす(プロフ) - しろくま様*おひさしぶりです。完結おめでとうございます。読ませていただきました。応援したくなるくらいふたりが可愛くて面白かったです。“夜分遅くに“を入れてくるしろくま様の機動性はさすがですネ^^。 (2022年1月17日 23時) (レス) id: d251bf862e (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - みるみるみるきーさん» みる様、チュー迄で終わってしまった自分が悲しい…次は必ずベッドにたどり着くよう頑張ります。夜分遅くに、リアルで実現する日を待ち焦がれています!最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。 (2022年1月17日 10時) (レス) id: d7e22074ad (このIDを非表示/違反報告)
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