アツアツを召し上がれ【ybhk】

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東京──夜中でもお祭りみたいに賑やかで、都会の人はいつ眠るんだろうってびっくりした。

おみこしもないのに、お祭りみたい、東京って。


とにかく自分に向いた仕事を探さなきゃって張り切って色んなバイトに精を出した。
小さなボロアパートにはホントに寝るために帰るだけ。

料理が好きだったから、いろんなレストランとかバーとか、居酒屋とか掛け持ちしてた。

そのうち、ちょこちょこっと料理を作ってるところをYouTubeに上げてたら、知らないうちに人気が出てた。


街で「ヒカリンのチャンネル見てます」って声を掛けられるようになって、恥ずかしいけどメチャメチャ嬉しかった。

お子さんを連れた若いママが「手早く作れて助かります」って言ってくれることが多くて、家事や育児に追われて大変だったおれのお母さんと重なった。

お子さんと一緒に、おれの動画を見ながら晩御飯を作って、ヒカリンのご飯だよって言うと、嫌いなピーマンも食べるんだって。

うれしいよね。


しばらくしたら、なんかテレビに呼ばれるようになって、気が付いたらお昼の人気番組“オヒルナンダヨ”で……レギュラーっていうの？
月曜日から金曜日まで毎日3分間のお料理コーナーを持つようになっていた。


生放送でお料理するんだよ。
今でもドキドキする。


月曜はガッツリ男飯、火曜は冷食やレトルトを使った早業レシピ、水曜はヘルシーなダイエットメニュー、木曜は一品でメインになる料理、金曜日は番組ゲストからのリクエスト料理って具合。


たった3分間でも毎日生放送だから、のんびり屋のおれにとってはそれこそ目が回るような忙しさ。
土日でメニューを考えてスタッフさんと打ち合わせ、当日は4時間前から準備して本番に臨んでいる。


もちろん、失敗もいっぱいしたけど、“オヒルナンダヨ”の優しいスタッフさんとタレントさんに助けられて、視聴者さんからも温かく見守られ、もう3年目になった。

自分のチャンネルが自分だけのリビングだとしたら、“オヒルナンダヨ”は近所の公園みたいな所。
いろんな人が行きかい、いろんな話をして、のんびり好きなことをしてるイメージなの。

刺激を受けるけど、刺激的すぎない、温かな場所。

ちょっとやぶにも似てるよね。


そうして、おれは“オヒルナンダヨ”で、やぶと運命的な出会いをすることになる。

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