アツアツを召し上がれ【ybhk】

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おれ、世間では「お料理系YouTuberヒカリン」って呼ばれてる。

今はタレント事務所に所属していて、YouTubeだけじゃなくて、テレビ番組やCMなんかにも出してもらっている。

ころころ変える派手な髪色に似合わない、おっとりした喋り方と天然発言がいいんだって。

……おれ自身は天然とか思っていないから、ちょっとそこは不満。

だけど、やぶも「天然のひかる、可愛い」って、いつも褒めてくれるから、それもいいのかな、ふふふ。



子どもの時から料理は好きだったんだよね。
うちはあんまりお金持ちじゃなくて、兄弟も多かったからお母さんの手伝いをしてるうちに、自然と料理好きになったって感じ。

そうは言ってもすごいご馳走とかじゃなくて、家庭料理と男飯とアウトドア料理を足して割ったような、簡単な「おうちごはん」ね。

今も作る料理はパパッと作れて楽しく食べることのできるようなものばかり。

“料理研究家”なんてとても名乗れないよ。

だから「お料理系YouTuberヒカリン」なんだ。

それに、「お料理系YouTuberヒカリン」って、子どもの頃にお姉ちゃんと夢中になって見ていた、可愛くてキラキラした美少女戦士アニメのヒロインみたいで、気に入ってる。

これはちょっと恥ずかしくて誰にも……やぶにも言ってない。
秘密にしてね。





──高校出て、最初に就職したのは田舎の地方銀行。

おれ、あんま頭は良くないけど真面目で無遅刻無欠席だったから、堅い仕事がいいんじゃないかって学校の勧めで小さな銀行を受けたら通っちゃった。

田舎で高卒で銀行に就職って、超エリートコースなんだよ。

お母さん、めためた喜んでくれたんだけど、4日で辞めた。

研修ていうの？

座って難しい話を何時間も聞いてたら頭が痛くなって、気が付いたら医務室にいた。
何にも覚えていないけど、あとから聞いたら、バターンッて椅子ごと倒れて気絶したんだって。


難しい話が分かんなくて、頭がパンクしちゃったんだろうねぇ、きっと。


これじゃダメだって辞表を出して、その足で東京に出てきたんだ。

……お母さんには、東京に着いてから電話した。

そしたら『寂しくなったらいつでも帰っておいで』って言ってくれて、絶対に東京で一旗あげるんだって決めたんだ。

お母さんにたくさん親孝行できるようになるまで、田舎には帰らないぞ、ってね。

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