寒い朝【リーマンyb×ドッグカフェオーナーhk】 ページ45
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冷え込んだ朝のことだった。
俺は満員電車を避けるために早起きして、最寄り駅まで急いでいた。
駅まであと少しって所で、道端に小さな白黒の塊が震えていた。
「…犬？」
長めの毛はシルクみたいに艶々して綺麗で、良く見かける犬種じゃない。
「どーした？」
犬好きの血が騒ぎ、優しく声をかけながら近寄ると、そいつはフサフサの尻尾を振る。
迷い子かなぁ。
頭を撫でても嫌がる素振りはない。
可愛くてつい抱っこした時だった。
「ノブナガ！」
プラチナみたいな髪色の若い男が白い息を咲かせながら走って来た。
あちこち探し回っていたらしく、頬っぺたが紅潮して、この寒いのにプラチナ色の前髪の下の額にはうっすら汗を浮かべている。
「お、ワンちゃんの飼い主？」
「はい！ノブナガ、心配したよ〜」
息を弾ませ、男は俺から犬を受け取ると頬擦りをしている。
「ありがとうございます、散歩中に逃げちゃって…本当に助かりました」
そう言って頭を下げる男に、普段なら『良かったですね、じゃあ』と立ち去る場面だった。
でも、笑顔に引き寄せられ、俺は咄嗟に「珍しい犬ですね」と話しを振った。
「この子、狆なんですよ。ご存じですか？」
「…狆？あっ、時代劇でお殿様が膝に抱いてるやつだー。だから名前がノブナガなんだな」
一人納得して小さな頭を撫でてやると、ノブナガは賢そうな丸い目で俺を見上げた──。
「俺、歴史好きでさ、特に信長が好きなんだよ」
犬に煽られてべらべらしゃべる俺に飼い主の男はウンウンと頷き、可愛らしく笑ってみせる。
「で、名前は何て言うの？」
ノブナガの頭を撫でながら、何気なさを装って尋ねた。
「え？ノブナガですけど…」
「飼い主さんの名前だよ。俺、やぶ」
「…ひかるです。おれ、ドッグカフェやってて…良かったらお店に来て下さい。お礼に美味しいコーヒーを淹れますよ」
ひかるはショップカードを渡してくれ、「ノブナガと一緒に待ってますから、絶対に来て下さいね」と念押しする。
「おー、絶対に行くな」
俺たちは手を振って別れた。
──今、俺とひかるの間には、人間みたいに布団をかぶったノブナガが寝そべっている。
寒い朝がくるたびに、俺はノブナガを抱いたあの日のひかるを思い出して一人幸福感に浸る。
寒い朝も悪くない。
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しろくま(プロフ) - Ｑさん» Q様、冬空ははじめはもっとダークな感じだったんだけど、締めのお話にこれはない！と気づいてあんな雰囲気になった次第です。でもなんかまだサウナについては消化できてない！！きっとまた書きますわ… (2021年2月19日 8時) (
レス) id: 690493538b (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - SK329さん» SK329様、ありがとうございます。公式が妄想みたいな今日この頃、ネタに困らない反面公式にノックアウトされつつ書いたお話ばかりで…(笑)寝室は完全に｢お、おまたせ｣リプに触発されたお話です。リボンをかけて捧げます。 (2021年2月19日 8時) (レス) id: 690493538b (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - ちちちさん» ちちち様、最後までお付き合いいただいてありがとうございました。どれか一つでもお気に召すものがあれば嬉しい限りです。ソロキャンネタのお話はちちち様に捧げます〜。公式のドラム缶風呂にノックアウトされましたが…(笑)あの頃は想像できなかった…。 (2021年2月19日 8時) (レス) id: 690493538b (このIDを非表示/違反報告)
Ｑ(プロフ) - しろくまさん» 冬空、途中まで笑ってたけどラストの一行でシーンってなったわ、まさしく冬空！ちねたん視点良かったです。そして山海読んでまた泣いてた。これは本当に泣けるわ~ベルトが落ちる音も復習したし…ショタやツバメやジョセフや…色々思い出しつつ最初から読み返してます (2021年2月18日 23時) (レス) id: a1a90f72f9 (このIDを非表示/違反報告)
SK329(プロフ) - 完結おめでとうございます！心からどれも大好きです！けど、どれかひとつと言われたらキッチン寝室です＞＜ リアルな生活感大好物ですっ。 (2021年2月18日 23時) (レス) id: 84f428f697 (このIDを非表示/違反報告)
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