紳士のハンカチ【リーマン設定】 ページ12
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見間違いじゃないかと、俺は目を擦った。
ここんところ残業続きで疲れがたまっているのかもしれない。
それとも久々に飲んだ酒のせいだろうか。
夜の公園、何か黄色い布がヒラヒラ揺れていている。
黄色くて揺れるものなんて──ハンカチじゃあるまいし。
植栽の隙間から覗き込むと、ドレスのような衣装を着た若い男が踊っている。
あまりのシュールな光景に思わず視界を遮る葉っぱを両手でかき分けた。
その男の顔には見覚えがある。
だけども……そんなはずない。あり得ない。
だが、何度目を擦っても、夜の公園の真ん中でヒラヒラと黄色いドレスの裾を揺らして踊っているのは間違いなく、後輩の八乙女だった。
八乙女はいつもキチッとネクタイを緩みなく締め、地味なスーツにはシワ１つない。
営業にありがちな接待で朝まで飲んでも乱れるようなことはなく、翌朝ヨレヨレの自分の隣でいつもと変わりなく涼しい顔でパソコンを叩いているような奴だ。
その八乙女が頼りない街灯の灯りの下で、無心にドレス姿で踊っている。
ありふれた滑り台やブランコがまるで八乙女のための舞台装置みたいだ。
──俺が知らないだけで、イケてるビジネスパーソンはみんなドレス姿で踊っているんだろうか……？
マインドフルネス的な……？
まるで月の世界から来た天女のように軽やかに、優雅に踊る八乙女をぼーっと見つめていると、ふと八乙女が顔を上げて目があった。
｢ひっ…やぶ先輩…！｣
ひどく慌てた八乙女は足を滑らせてそのまま地面に倒れた。
｢八乙女！おい！大丈夫かよ｣
焦って駆け寄り、助け起こした八乙女はポロポロ泣いていた。
｢おまっ…何で泣いてんだよ｣
｢だって…こんな…先輩に嫌われちゃう…気持ち悪いでしょ…｣
｢んなことねぇよ、マジでダンスうめぇじゃん。綺麗だった｣
｢ほんとに…？｣
潤んだ大きな瞳に見惚れながら俺は頷き、涙をハンカチで拭いてやる。
紳士のハンカチは淑女の涙を拭くためにあるっていうのは、本当のことだった。
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しろくま(プロフ) - Ｑさん» Q様、冬空ははじめはもっとダークな感じだったんだけど、締めのお話にこれはない！と気づいてあんな雰囲気になった次第です。でもなんかまだサウナについては消化できてない！！きっとまた書きますわ… (2021年2月19日 8時) (
レス) id: 690493538b (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - SK329さん» SK329様、ありがとうございます。公式が妄想みたいな今日この頃、ネタに困らない反面公式にノックアウトされつつ書いたお話ばかりで…(笑)寝室は完全に｢お、おまたせ｣リプに触発されたお話です。リボンをかけて捧げます。 (2021年2月19日 8時) (レス) id: 690493538b (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - ちちちさん» ちちち様、最後までお付き合いいただいてありがとうございました。どれか一つでもお気に召すものがあれば嬉しい限りです。ソロキャンネタのお話はちちち様に捧げます〜。公式のドラム缶風呂にノックアウトされましたが…(笑)あの頃は想像できなかった…。 (2021年2月19日 8時) (レス) id: 690493538b (このIDを非表示/違反報告)
Ｑ(プロフ) - しろくまさん» 冬空、途中まで笑ってたけどラストの一行でシーンってなったわ、まさしく冬空！ちねたん視点良かったです。そして山海読んでまた泣いてた。これは本当に泣けるわ~ベルトが落ちる音も復習したし…ショタやツバメやジョセフや…色々思い出しつつ最初から読み返してます (2021年2月18日 23時) (レス) id: a1a90f72f9 (このIDを非表示/違反報告)
SK329(プロフ) - 完結おめでとうございます！心からどれも大好きです！けど、どれかひとつと言われたらキッチン寝室です＞＜ リアルな生活感大好物ですっ。 (2021年2月18日 23時) (レス) id: 84f428f697 (このIDを非表示/違反報告)
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