船出【中世船乗りのyb×大船主の御曹司hk】 ページ2
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今日もサンマルコの港から大きな船が出ていく。
｢あの船、黄金郷を探しに行くんだって｣
ヒカルは古びたワイン樽の上に座り、ぶらぶら足を揺らす。
｢あー、おれも航海に出たいなぁ｣
ヒカルの頬は朝露を含んだ薔薇のように繊細だ。
海風に乱れる亜麻色の髪は柔らかくサラサラと流れている。
うっかり無作法に見とれてしまい、俺は慌てて視線を海に向けた。
｢あの船、ヤオトメ家の持ち物だろ？
ヒカルは危ない航海なんかしなくても、お屋敷でお宝を待ってたらいいんだよ｣
ベネツィアで知らぬ者はいない、大船主のヤオトメ家。
その若君様のヒカルは船になんか乗らなくてもいい。
それなのにコッソリ港に来てはこうして船を眺めて、俺みたいな下っ端船員を相手に航海への憧れを口にする。
｢そのうち俺が船長になって、ヒカルのために沢山宝物を持って帰ってやるよ。
真珠の首飾りだろ、黄金の腕輪に、ダイヤモンドの指輪……みーんなヒカルにやるよ｣
この美しい魂の持ち主に捧げるものを、俺は持っていないから──俺の命だって惜しくない。
俺はヒカルの物なんだから。
ヒカルに優る宝物なんか、この世にないんだから。
ヒカルが樽から飛び降り、白い指が俺の汚れたシャツの裾を掴んだ。
｢ヤブが船長さんなら、おれも一緒に旅に出たいよ！
待ってるだけなんか嫌だ…おれ、ヤブと一緒がいいんだ。宝物なんかいらない!!｣
｢……船主が乗組員の船なんて、聞いたこともねぇよ｣
ヒカルの指をそっと外す。
どんな宝物だって、俺の命だって捧げるからな、ヒカル。
柔らかな頬を濡らす涙を袖で拭いた。
｢ヒカル、おめでとう。
明日の結婚式は──俺も遠くからお祝いするからな｣
大人の笑顔を作ってそう言った。
だけど──ヒカルの瞳を見つめると、胸の中が焦げるように熱い。
｢俺の船に乗るか、ヒカル？難破するかもしれないぞ？｣
｢難破なんかしないよ、ヤブが船長さんなら｣
手を繋ぐ。
これから二人の船出だ。
俺はヒカルにそっと口づけた。
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しろくま(プロフ) - Ｑさん» Q様、冬空ははじめはもっとダークな感じだったんだけど、締めのお話にこれはない！と気づいてあんな雰囲気になった次第です。でもなんかまだサウナについては消化できてない！！きっとまた書きますわ… (2021年2月19日 8時) (
レス) id: 690493538b (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - SK329さん» SK329様、ありがとうございます。公式が妄想みたいな今日この頃、ネタに困らない反面公式にノックアウトされつつ書いたお話ばかりで…(笑)寝室は完全に｢お、おまたせ｣リプに触発されたお話です。リボンをかけて捧げます。 (2021年2月19日 8時) (レス) id: 690493538b (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - ちちちさん» ちちち様、最後までお付き合いいただいてありがとうございました。どれか一つでもお気に召すものがあれば嬉しい限りです。ソロキャンネタのお話はちちち様に捧げます〜。公式のドラム缶風呂にノックアウトされましたが…(笑)あの頃は想像できなかった…。 (2021年2月19日 8時) (レス) id: 690493538b (このIDを非表示/違反報告)
Ｑ(プロフ) - しろくまさん» 冬空、途中まで笑ってたけどラストの一行でシーンってなったわ、まさしく冬空！ちねたん視点良かったです。そして山海読んでまた泣いてた。これは本当に泣けるわ~ベルトが落ちる音も復習したし…ショタやツバメやジョセフや…色々思い出しつつ最初から読み返してます (2021年2月18日 23時) (レス) id: a1a90f72f9 (このIDを非表示/違反報告)
SK329(プロフ) - 完結おめでとうございます！心からどれも大好きです！けど、どれかひとつと言われたらキッチン寝室です＞＜ リアルな生活感大好物ですっ。 (2021年2月18日 23時) (レス) id: 84f428f697 (このIDを非表示/違反報告)
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