呪いの金魚鉢【yb×hkarcn】

抜け出せない…… ページ3

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「おかあさん。あれやりたい」

子供の頃行った夏祭りの夜店。
キラキラした水面には黒と赤の金魚が元気よく泳いでいる姿が映ってた。

ポイをもらって慎重に掬うが、なかなか掬えない。
結局一匹も掬えなくて、でも一匹だけ貰えると聞いたので黒の金魚を貰った。
兄貴が赤の金魚を貰って俺にくれた。


家にある水草しか浮いてない金魚鉢に入れてしばらく眺めていたら、金魚たちが笑った気がした。

「え？お、おかーさぁんん！」
兄貴に話したら大笑いされたけど、だけど…


笑ったように見えたのが気になって、みんなが寝静まってから、怖いのにリビングの金魚鉢を覗きにいったんだ。


そしたら、鉢の中から話し声が聞こえてきて。

『やっといっしょ』
『やっとあえた』
『まってたよ』

え？誰？誰の声？

怖いのに、覗きこんだなかにいたのは……
可愛い人が３人。

え？？人？と、びっくりしてると

『あ、見られちゃった』
『ふふ』
『おいでよ』


俺は彼等のいるところへ引き込まれた。
金魚鉢の中になんで入れるの？
水のなかのはずなのに息ができる。なんで？


『今から楽しいことしようね』
背の高い人が俺に言う。

いきなり塞がれた口。
口付けされぼーっとしてると、小さい二人が俺に抱きついてきて、あちこちに口付けながらくるくると水中をまわる。

な、に？なんなの？

また背の高い人が言った。

『気持ちいいことだけ考えて』

そのまま堕ちていって、気がつくと自分の部屋のベッドにいた。


なんとなく家族に話せずに夜を迎え、また、金魚鉢の前に来る俺。


『きょうもきてくれたんだね』
『じゃあ、もっと楽しいことしようね』
『ね、こーた』


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アレから数年、大人になってひとり暮らしを始めるときに託された金魚鉢。
金魚と水草に誘われて今日も快楽の海へ沈んでいく。


「ひかる、もっとこっちきて」
『ん、ぁぁ』
「かわいいよ、ひかる」
水草はひかる。

『こーた、ヒカばっかり』
「拗ねんなよ、だいき」
左手でだいきの尻を撫であげれば
『ひゃうっんん』と可愛い声を出す。
黒の金魚はだいき。

『こーた、僕も』
「ふふ、順番ね」
俺の右手に腕を巻き付けておねだりしてくる。
赤の金魚はゆーり。


あの日、幻想の世界へ連れていかれた俺は
すっかり虜になって今も３人と一緒に暮らしてる。

金魚や水草がなんで人に変化するのかなんてどうでもいいこと。


今が楽しければいい。
この３人とずっといられるなら。


終

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