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「高校に上がる前の春休み、おれんちで薮とヌキ合ったよな?」
光はホウレンソウを手際よく切り、鰹節と醤油で和え始める。
今まで封印してきた二人の秘密をボウルでかき混ぜ始めた光の口は止まらない。
「おれがキスしたら、即興劇(エチュード)だってお前が言い出してさ、薮にとってはお遊びだったんだろうけど、おれは本気だった。
それから、デビューしてからもそういうこと、あっただろ?薮が一人暮らし始めた頃だっけ。ベッドにまで連れ込まれて、もうやるしかねぇなって時になって、お前──逃げやがって。ほんっと信じられねぇよ」
菜箸でビシッと指され、俺は「ごめん」とついついうっかり謝った。
光は眉間に皺を寄せ、「そういうところも、やぶの悪いところだよな」と続ける。
「薮は何でもそうやって謝ればいいって思ってるんだろ。お前、おれが何で怒っているか分かってんの?」

俺はまじまじと光を見た。
こんなふうに光が俺を指弾したことは今までなかったから、あっけにとられていた。
居酒屋で光が俺の頬を叩いたことも、光の運転するクルマの助手席に乗ったことも、今夜が初めてだった。
長い付き合いなのに、今夜は初めてのことが多すぎる。

「……お前にカノジョができたんじゃねーかと焦った時に、伊野尾にそのことを聞いたことがあるんだよ」
どうせ初めてばかりの夜なら、俺だって今までコイツに黙っていたことを口にしてやる。
「いのちゃんに──?」
「そしたらさ、あいつ、薮は客観的過ぎて自分をおいてけぼりにしてるって突っかかってきて、そんときは意味分かんねーって思った。でもさ、光」

どう言ったら光にうまく伝わるんだろう。
言葉を切って、光の明るい髪に手を伸ばした。
サラリとした柔らかな手触り。
「俺、自分が普通じゃなくなるのが怖かった。お前のことが好きだと認めたら、自分が変わってしまうんじゃないかって、怖かったんだ」
ゆっくりと繰り返し髪を指で梳いた。
光の瞳は明るい髪色とは反対に夜空みたいな黒で、その夜空のような瞳の奥深くに隠されたかすかなきらめきに惹かれた。
「だけどな、伊野尾の言ったこと、よーく考えたら、最初からそうなら変わるも何もないじゃん?」
「だから、なに?」
こんなに不機嫌そうなコイツの声さえ“可愛い”って思えるんだから、仕方ねぇよ。
「つまりだな、徹頭徹尾、俺は変わってなんかいなかったんだよ」
髪を梳く俺の左手を、光の右手がそっと握った。
利き手は菜箸を持ったまんまだったから。

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しろくま(プロフ) - Qさん» 手のひらを返したような甘デレのやぶりんです(笑)長年拗らせていたら、ああなっちゃうのでしょうか?夜のご指導は…どうでしょうか?別の機会に(笑) (2019年5月9日 21時) (レス) id: 58687bcc1e (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - おまけもたっぷりで完結おめでとうございます!ゆうやま!可愛い。そしてぐるぐるしてたくせに、今はすっかり幸せ一杯の薮さんが可愛くって可愛いです。…しかし、ちょっと聞きたかったですよ~。薮さんのゆうとくんへの赤裸々な性活指導… (2019年5月9日 19時) (レス) id: ce22f02e95 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - はなこさん» はなこ様…ゆとやま作者様に読んで頂いて恐縮です(;^_^Aやまちゃんのお誕生日記念のつもりだっつたのですが、本人が登場しないという体たらく…。可愛いやまちゃんははなこ様で美味しく頂こうと思っておりますっ。コメントありがとうございました。 (2019年5月9日 9時) (レス) id: 58687bcc1e (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - みるみるみるきーさん» みる様、ゆーと担から殺されるかもしれん、と怯えつつ…。ゆーとくんはイケメンが過ぎるので、どうしてもこんな感じにしないと私には書けないのですな(笑)楽しんで頂けてよかったです〜。 (2019年5月9日 9時) (レス) id: 58687bcc1e (このIDを非表示/違反報告)
はなこ(プロフ) - 完結おめでとうございます!やぶひかが最近、ますます尊いのはこんな裏が…なんてリンクしちゃいました。そして、しろくま様のゆとやま〜っ!また是非ぶっ込んでくださいませ! (2019年5月8日 23時) (レス) id: be0c1ceb57 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:しろくま | 作者ホームページ:___  
作成日時:2019年4月2日 10時

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