。。 ページ19
.
くだらない話とまじめな仕事の話を7対3くらいの割合でステアして、いい感じで時間は過ぎた。
今夜は飲むと宣言した通り、伊野尾は随分とピッチを上げて日本酒から焼酎へと飲み進み、茶碗によそった白飯を食いながら酒を飲むという、俺にはとうてい信じられない飲みっぷりだった。
雄也がコイツのことを可愛いと呟いていたが、どうにも俺にはそう思えない。
一方、光はウーロン茶をちびちびと飲み、伊野尾の話にうんうんと相槌をうったり、俺の食べこぼしをせっせとおしぼりで拭いたりと、まるで俺と伊野尾を取り持つように控え目にふるまっている。
「ひかるわぁ、ここんとこどうなのぉ〜いい人できたぁ〜?最近聞かないけどさぁ〜」
そう言って、伊野尾は焼酎のお湯割りをうまそうに飲む。
「ほら、えーっと、何て言ったっけ、スタイリストのぉ…そだそだ、くーちゃん。光、一緒に飲みに行ったんだろぉ〜?
それから、クルマのディーラーの人もぉ、何だかんだ言って、光に気がありそうじゃん?光ってホント一般人からモテるよなー」
「……へぇ、光、そうなんだ」
体の向きをずらして光にむきあうと、やつは「そんなことねーよ」と軽くいなした。
昔の光なら、こういう話題では耳を赤くして恥ずかしがり、ギャーギャー騒いだものだけど、肝心な部分について触れないという手慣れた躱し方に、ああ光も大人になったな、と妙な感慨を覚える。
そうなると、今度は光を構い倒したくなった。
「くーちゃんって、元々○○さんのセ フレだろ?次は光に乗り換えってわけだ」
頬が鳴った。
痛みを感じたのは、ジョッキが倒れてテーブルから床に金色の滝が流れ落ち、どくどくと俺のジーンズを冷たく濡らしたあとだった。
頬を叩いた左手を光は宙に浮かしたままで、俺は俺で身動きがつかなかった。
「あのー、すいませーん。台拭きくださーい」
のんびりとした声で伊野尾が店員を呼び、飛んできたおばちゃんが「あらまあ」とか何とか言いながら、実に手早くテーブルや床を片付け、俺のジーンズを容赦なく拭いた。
「すみません……」
為されるがまま、おばちゃんの手で子供のように始末をつけられた俺は情けなくぼそぼそと礼を言う。
「んじゃ、お会計してこよ」
よっこいしょ、とやっぱりオヤジ臭く言いつつ立ち上がり、伊野尾はふわふわした足取りで個室を出て行った。
俺たちに時間と場所を与えてくれた伊野尾は、やつなりに気を使ってくれているのだが、どうしようもない気まずさが喉元を締め付けた。
292人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
しろくま(プロフ) - Qさん» 手のひらを返したような甘デレのやぶりんです(笑)長年拗らせていたら、ああなっちゃうのでしょうか?夜のご指導は…どうでしょうか?別の機会に(笑) (2019年5月9日 21時) (レス) id: 58687bcc1e (このIDを非表示/違反報告)
Q(プロフ) - おまけもたっぷりで完結おめでとうございます!ゆうやま!可愛い。そしてぐるぐるしてたくせに、今はすっかり幸せ一杯の薮さんが可愛くって可愛いです。…しかし、ちょっと聞きたかったですよ~。薮さんのゆうとくんへの赤裸々な性活指導… (2019年5月9日 19時) (レス) id: ce22f02e95 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - はなこさん» はなこ様…ゆとやま作者様に読んで頂いて恐縮です(;^_^Aやまちゃんのお誕生日記念のつもりだっつたのですが、本人が登場しないという体たらく…。可愛いやまちゃんははなこ様で美味しく頂こうと思っておりますっ。コメントありがとうございました。 (2019年5月9日 9時) (レス) id: 58687bcc1e (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - みるみるみるきーさん» みる様、ゆーと担から殺されるかもしれん、と怯えつつ…。ゆーとくんはイケメンが過ぎるので、どうしてもこんな感じにしないと私には書けないのですな(笑)楽しんで頂けてよかったです〜。 (2019年5月9日 9時) (レス) id: 58687bcc1e (このIDを非表示/違反報告)
はなこ(プロフ) - 完結おめでとうございます!やぶひかが最近、ますます尊いのはこんな裏が…なんてリンクしちゃいました。そして、しろくま様のゆとやま〜っ!また是非ぶっ込んでくださいませ! (2019年5月8日 23時) (レス) id: be0c1ceb57 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ