左右対称【ybhk】

ホンモノ ページ32

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｢おめでとう、ひかる｣

耳元で思い切り甘く囁くと、ひかるは潤んだ瞳で左の小指を見つめる。
ハッピーバースデーを歌いながら嵌めてあげたピンキーリングはシンプルなプラチナのもので──センスのない俺には単なる輪っかとしか思えない。

そう、単なる金属の輪っか。
だけどそれは。

｢ありがと…嬉しい｣

ピンキーリングはホテルの落ち着いた照明にきらめき、ひかるのカッコいい手に良く似合っている。
｢……やぶ、ホンモノの指輪の約束、覚えてた？｣
含み笑いをするひかるに、俺は｢もちろん｣と胸をはる。

10年前、19歳のひかるの誕生日に俺はチョコレートの銀色の包み紙で作った指輪をプレゼントした。
照れ臭くてふざけたんだけど、その時に小指で指切りして約束したんだ。
10年後にはホンモノをやるから、って。

……10年越しのホンモノの指輪だぞ、ひかる。

｢ひかる、それ、何だと思う？｣
秘密を秘密のままにできないのは、俺の昔からの欠点。
今夜もやっぱり種明かしを自分からしてしまう。
｢え？ピンキーリングだろ？｣
｢ブブー、違います〜｣
ひかるは不思議そうに指輪と俺を見比べ、｢正解は？｣と答えをねだった。

｢正解は…結婚指輪です〜！｣

俺はポケットに突っ込んでいた左手をひかるの目の前でヒラヒラさせた。

お揃いのピンキーリングだ。

｢仕事上、薬指にはできないけどさ、ひかるの指輪には内側にダイヤも付いてるんだぜ｣

ひかるは息を飲んで指輪を外して明かりにかざした。
小さなダイヤを挟んで黄緑と黄色い石が埋め込んである。

｢それ、なんとかっていう石なんだ、あー、なんだったっけなぁ｣

やっぱり照れ臭くてそっぽを向き、俺は頭を掻いた。

｢やぶ！｣
首ったまにひかるが飛びついて、優しくキスしてくれた。
｢……今夜はやぶ、寝かせないよ｣
｢おう、望むところだ｣
今度はこちらから唇を重ねる。

お揃いの指輪は２人の左の小指できらめく。

小指で指切りして約束したピンキー。

今度はホンモノだからな、もう離れることなんかできねーぞ、ひかる。




▼*Happy Birthday*▼

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