左右対称【ybhk】

手をつないで行こう ページ4

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---yb side

「カルビ焼けたよぉ〜」

ひかるが張り切って仕切っている。
俺の地元の仲間が誘ってくれた男ばかりのBBQ。

湘南の海なんて、いつ以来だ？
しかも、ひかるとデート気分でBBQなんて夢みたいだ。
いい友達持ってよかった。

海辺は暑いけれど、潮風は気持ちいい。


地元の友達に引き合わせた時、ひかるはもじもじと恥ずかしそうにしていて、俺の後ろに隠れるように頭を下げていた。
シャイなあんちくしょう。
だけど、いざ肉を焼き始めると、本来の料理魂に火がついたのか、トングを持って離さない。

せっせと肉を焼き、野菜を焼き、あんばいよくみんな均等に食べることができるように気配り、目配り。
ひかるはこういう鍋奉行的なことが得意だし、好きだ。

俺の皿にも「はいよ」といい具合に焼けたカルビを乗せ、にっこり笑った。
サングラス越しにも、ひかるの目がきらきら輝いているのが分かる。

──嬉しいんだよな、そうだよな、こうして俺の友達に「俺ら付き合ってるんだ」とハッキリ紹介したのは初めてだったから。

俺の友達たちは「へー」とか「知ってたしー」とか、薄いリアクションで俺たちを祝福してくれた。
特別とか、そんな感じでなく、ごく自然な感じで俺らの関係を認めてくれたんだ。
まじ、いい友達持ってよかった。

「ありがと、ひかる。ひかるも食べろよ？」
「うん、合間合間に食べてるから大丈夫。あ、ピーマンも食べて」
「えー、ピーマン〜？」
「野菜も食べなさーい」
「オカンかよっ」
互いの顔を見合わせて、ぷぷっ、と噴き出すと、俺らのやりとりに仲間たちからも笑いが起きた。

「夫婦みたいだな」
そう笑われた。

これって冷やかされてんだろうか、ひょっとしたら。

ひかるは赤い顔で、「はいはい、次焼けたよ、豚トロ食べたい人〜!」ってトングを振り回す。
ばか、声でけぇって。
腹から声出したら気付かれちゃうだろ。

ほら、気付かれた。

「じゃ、俺らはお先に」
あらかじめ顔バレしたら先に帰ると言ってあるから、俺は遠慮なく仲間に断って、「ひかる、行くぞ」と手を取る。

仲間たちは「じゃあな〜」と引き留めようともせず、俺らを見送ってくれた。

砂浜をザクザク横切り、道路を渡って駐車場までもう少し。
もう少しだけ、俺たち手をつないで行こう。

クルマに乗り込んだひかるが「あっ」とまた大声を出した。
「持ってきちゃった……」
左手に握られた銀色のトング。
俺たちはまた顔を見合わせて噴き出した。

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