熱 ページ11
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汗に濡れた肌のべたべたした感触も、だらしなくまとわりつく前髪も嫌い。
夏は嫌い。
夏の夜、ベッドにおれを連れ込むやぶも嫌い。
いくらクーラーを効かせていたって、なんでかな、夏の間のやぶの身体は燃えるみたいに熱い。
「あっつい……」
おれの胸にちゅうっと吸い付くヤツの唇、焦げるほど熱い。
我慢できないほどの熱さに、思わず身をよじって逃げようとしたけれど、やぶはそれを許してくれなかった。
「…もっ、やだ……あついぃ……」
「熱い? ひかる、感じすぎてんだろ」
そんなふうに笑って、やぶは胸の小さな尖りを強く摘まみ上げた。
その指さえ、熱をもっていて。
「あああ!!──やっ……あっあっ……!!」
自分のものとは思えないほどの淫らな声をあげてしまい、恥ずかしさに涙が出る。
涙も嫌だ。
泣くなんて、おんなみたいだもん。
おれ、おとこだから、なにがあっても泣きたくないんだよ、ホントは。
「ひかるのえっちな声、好き。もっと我慢しないで聞かせろよ」
覆いかぶさってきたやぶの目は隠しようもない欲に燃え、いつもの穏やかなあいつとは違う。
「ひかる」
そう呼ぶ声さえも、おれの知っているやぶじゃないみたい。
何度体を重ねても、慣れない肌の熱。体の熱。そして、猛った熱の塊。
「ひかる……力抜いて……いれるぞ……」
繋がっていく。
熱が切り裂く。
ふたり、繋がってひとつになるはず。
なのに、切り裂く痛みは。
この痛みと熱は。
ひとつになっちゃいけないのに、無理矢理ひとつになろうとするおれに与えられた、罰。
「やぶっ……あっつい……あああ……あついよぉぉ──!!」
悲鳴を上げてもやぶは止まることなく強く腰を打ち付け、その熱をおれに叩き込む。
熱が、やぶの熱が──広がっていく……。
気づくと、おれは赤ん坊みたいに丸くなってやぶの胸に抱かれていた。
「……目、覚めた?」
身じろぎしたおれに、やぶは優しく微笑んで、たぶん不格好に張り付いた前髪を梳いてくれた。
優しくて、かっこよくて。
やぶはだれからも愛されるべき正しい人間だ。
おれが独占していて、いいはずない。
この熱を、おれが感じていていいわけない。
「──やぶ、おれ」
言いかけたおれの唇を、やぶの薄い唇が塞いだ。
「ひかるは黙って俺の言うこと聞いてりゃいい。考えるのは、俺の役目だろ?」
熱っぽく囁かれ、おれは黙って頷いた。
今はまだ、この熱をおれが感じていていいんだ──。
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しろくま(プロフ) - べすさん» べす様、ひょえ〜勿体ないお褒めの言葉にうち震えております(;´∀`)リアルのお二人がますます仲睦まじい様子で、妄想も負けずにラブラブさせたいと思っています。ベす様のお話もワクワクしながら読ませていただいていまーす。コメントありがとうございました (2020年4月14日 23時) (レス) id: 8dcb6e2f50 (このIDを非表示/違反報告)
べす(プロフ) - 完結おめでとうございます。しろくま様の味わいのあるお話は本当に“珠玉”という言葉がぴったりで心惹かれるものばかりでした。これからも何度となくお邪魔して読ませていただきます。また、先日のお優しい返信にとてもホッと致しました(涙) (2020年4月14日 17時) (レス) id: d251bf862e (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - ちちちさん» ちちち様〜、こんな時こそ脳内妄想で「もっとアドレナリン」です!自己生産しかない(笑)健康一番、オタ活二番で長丁場を乗り切りましょう(^o^)v (2020年4月12日 21時) (レス) id: 690493538b (このIDを非表示/違反報告)
ちちち(プロフ) - しろくまさま、最後のお話にきゅーっときて、私も妄想頑張ろうと思いました!こんな時だからこそ妄想で自由に羽ばたいてもいいんですよね!いつも素敵なお話ありがとうございます。 (2020年4月10日 22時) (レス) id: b5788e234f (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - みるみるみるきーさん» みる様〜ありがとうございます。獣人シリーズは長編ネタだったかもしれん…とちょっと書ききれなかったネタに後悔してます←無計画。でも幸せな家族の形で終わりにできて満足です。そしてワタクシ、「はっぴーばれんたいん!!」をメチャクチャ待ってます…(///∇///) (2020年4月8日 12時) (レス) id: 690493538b (このIDを非表示/違反報告)
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