秘密 ページ22
.
アイドル誌の撮影は、馴染みのカメラマンやスタイリストに囲まれ、賑やかに進む。
やぶは大ちゃんを相手にツーショットの撮影中だ。
大ちゃんにウザ絡みするやぶはふにゃふにゃ笑っていて、周りも自然と笑顔になる。
やぶの記憶が変になってからひと月。
その間に生放送の歌番組や、バラエティの収録もあった。
初めはひかるはもちろん、このことを知るメンバーと数人のスタッフは、やぶがきちんと仕事に当たれるかと心配していた。
しかし、飄々と仕事をこなし、少しも破綻のないやぶの様子にだんだんと周囲も慣れてしまい、今ではまるで何事もなかったようだ。
ひかるさえ、うっかりやぶの中身が高校生だということを忘れてしまうことがある。
嵐の後の凪いだ海のような穏やかな日々。
やぶと大ちゃんは腕を組んで、とびきりの笑顔を見せている。ひかるはその様子をぼんやり眺めていた。
「やぶくん、元気そうだね」
先に撮影を終えたやまだがひかるに声をかけてきた。
「あー、そうだな」
「あの人、頭の中が高校生に戻っても全然違和感なくね？」
「確かにな……みんな気がついてないだろうし」
「むしろちょっとイイ感じじゃん」
やまだはアーモンド型の目をひかるに向ける。
「やぶくんとヒカって、付き合ってんだろ？」
驚いて言葉を失ったひかるに、「そんなに驚く？バレてないって信じてる方がどうかしてるとオレは思うけど」とやまだは肩を竦める。
「前にやぶくんに聞いたんだよ。ヒカとずっと一緒で、いい加減飽きない？って。そしたらさ、“ひかるに飽きる日なんて一生ないね”ってサラッとノロケやがって……アホくさ」
どのタイミングでやぶとやまだがそんな話をしたのかと、ひかるは視線を床に落とす。
「オレは、二人がどんな関係でも別にいいけど、あんな変人はひかるくんにしかコントロールできないっしょ？」
「やぶが変人……？」
「変だよ。ちびっ子の時からどっぷり芸能人のくせに、普通って感じを手放さないし。アレは変人だね。ヒカの方がよっぽどまともだろ」
この世界ではね、とやまだは一言付け加え、「じゃあね」と行ってしまった。
みんな、おれらが付き合っていたこと、知っていた──？
やぶはみんなが知っていることを、おれに黙っていたんだ。
ドッと笑い声が起きた。
大ちゃんがやぶを背負ってフラッシュを浴びている。
小柄な大ちゃんが長身のやぶをおんぶしている姿はユーモラスで、若いメイクさんは笑い転げていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 149人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
しろくま(プロフ) - ちちちさん» ちちちさま、ノロノロと書いていくので遅いですが必ずひかちゃんを幸せに致します。どうかお付き合いください (6月24日 0時) (
レス) id: d7e22074ad (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - kirinsanmoさん» kirinsanmoさま、コメントありがとうございます。ゆっくり更新ですが楽しんでいただけると嬉しいです (6月24日 0時) (レス) @page4 id: d7e22074ad (このIDを非表示/違反報告)
ちちち(プロフ) - ああありがとうございます!ありがとうございます…大切に読んでいきます! (6月18日 23時) (レス) @page3 id: 3093699708 (このIDを非表示/違反報告)
kirinsanmo(プロフ) - どんな展開になるのかワクワクします、、更新楽しみにしてます！ (6月8日 18時) (レス) @page3 id: 4bf1b7a22e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
