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「来てくれたんだ」
やぶはニコニコしながらドアを開けてひかるを招き入れる。
「さっきまで母さんがいたんだけど、買い物に行ったんだ。俺んち、冷蔵庫に何もなくて呆れてた」
拍子抜けするほど平気な顔をして、やぶはひかるに「水しかねーんだ」とペットボトルを投げた。
放物線を描いてひかるの手に収まったペットボトルはひんやりと冷たい。
並んでソファに座る。
やぶの家に久しぶりに来たが、目新しいものは何もない。
サッカー雑誌、何かの小説、漫画雑誌の山。
部屋の隅にはなぜか靴下の片方が丸まっていた。
女を感じさせる物は見当たらず、安堵する。
「病院、あれからどうだった？」
「あー、なんかやっぱりよく分かんねーみたいでさぁ、とりあえず様子見てくださいって。薬もなし。チーフマネ？あの人と相談して明日から仕事復帰することにしたよ」
やぶの言葉にひかるの手に力がこもる。
それに気がついたように、やぶはちょっと困ったように眉を下げて「まだ記憶は高校時代なんだけど、雑誌や映像見て、今の……今の仕事、把握したから。俺、大丈夫だと思う」と続けた。
穏やかな“大丈夫”に、さまざまな気持ちが込められている。
ひかるは水を一口飲み、「そっか」と答えた。
「でも──やぶ、それ秘密なんだろ？バレたらどうすんの」
「ひかると一緒なら大丈夫な気がする」
言ってから照れたように俯き、それから「ひかるがいて、良かった」と目を細めて笑った。
まっすぐな、あの頃のやぶ。
ひかると2人の時は甘えたで、ストレートに好意を示してくれたやぶ。
懐かしくて、大好きなやぶ……。
「メンバーには話す？」
「うん、説明しとこうと思う。明日、全員に集合かけるってさ。みんなに迷惑かけて悪いなぁ」
みんなが誰のことを指すのか、もうひかるにはわかっていた。
「じゃあ、また明日」
そう言って立ち上がったひかるに、やぶは慌てて「帰んの？」と引き止める。
「まだいいじゃん。ホラ母さん戻って来るまでいてよ」
「子どもじゃねーだろ？おばさんに気を遣わせたくないんだよ」
さらりと答えて上着を羽織るひかるに、渋々と立ち上がったやぶは「なら、ちゅーだけ、な？」とねだる。
「やだよ」
「なんで。バイバイのちゅーくらい、いいだろ？」
「おまえなぁ……」
「いいじゃん。俺ら恋人なんだし」
やぶはひかるの頬に素早く唇を押し付け、リップ音を残して離れていった。
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しろくま(プロフ) - ちちちさん» ちちちさま、ノロノロと書いていくので遅いですが必ずひかちゃんを幸せに致します。どうかお付き合いください (6月24日 0時) (
レス) id: d7e22074ad (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - kirinsanmoさん» kirinsanmoさま、コメントありがとうございます。ゆっくり更新ですが楽しんでいただけると嬉しいです (6月24日 0時) (レス) @page4 id: d7e22074ad (このIDを非表示/違反報告)
ちちち(プロフ) - ああありがとうございます!ありがとうございます…大切に読んでいきます! (6月18日 23時) (レス) @page3 id: 3093699708 (このIDを非表示/違反報告)
kirinsanmo(プロフ) - どんな展開になるのかワクワクします、、更新楽しみにしてます！ (6月8日 18時) (レス) @page3 id: 4bf1b7a22e (このIDを非表示/違反報告)
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