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いきなりドアが開くと、高木雄也が白い大理石の上に立ちはだかっていた。
銀のピアスが冷たく耀き、どこか崩れた雰囲気のダークスーツ。
昼間の高木よりも鋭さが増したように思えて、宏太は上げた拳をゆっくりと下ろし「侑李をどうした」と一息に言う。
「……なんのことだ」
「知念侑李だよ。おまえが連れ去ったんだろ。返せ」
「は？知らねぇな」
口角の片方だけを歪めて答えた高木に、宏太は瞬間的に怒りが沸点に達し、左の拳で高木の顔を殴りつけようとした。
その拳を、花びらのように柔らかく受け止めたのは、光だった。
「宏太」
光はふんわりと微笑み、両手で宏太の握りしめた拳を包み込む。
「光――」
乾いた声で名前を呼ばれ、光はそっと手を放して、顔色を窺うように高木の顔を上目遣いに見た。
その媚びるような視線に、高木はニヤリと笑った。
「今夜は、千客万来だな。――入れよ」
何度も足を踏み入れた光の部屋だったが、リビングとは別にしつらえられたシックなバーコーナーは初めてだった。
開放的な大きな窓からは自分の街が見下ろせる。
夜の帳に見たくない現実が包み隠された街は、きらめく光ばかりで美しい。
宏太はスツールに腰かけて、黒いカウンターに肘をついてぼんやりとそんなことを思った。
ホンモノのバーに負けないほどの高級そうな酒瓶が整然と並び、落とした照明に映えている。
カウンタ―の隅に飾られた花は、数日前に宏太が届けた深い紫色のチューリップだった。
色合いが珍しく、花弁には繊細なレースを思わせる切込みが入った新品種だ。
『高木さんは紫が好きなんだ……』
そう言って店先の花々の中からそれを選んだ光のうるんだ瞳に、今頃になって宏太は嫉妬を覚える。
「光、マティーニを作ってくれ。……こっちのガキはトマトジュースか？」
「水でいい」
本気で嫌な顔をした宏太に、高木は鼻で笑う。
カウンタ―に入った光は、慣れた手つきでグラスをステアし、オリーブを添えて高木の前に差し出す。
宏太の前には細かな気泡が弾けるペリエをロンググラスに注いで、そっと置いた。
「知念侑李……俺は連れ去りなんぞ知らねぇぞ」
長い脚を組んで、斜に構える高木はマティーニのグラスに口を付ける。
「確か、与党の知念宗次先生の一人息子だな？Blue Chainに出入りしているっていうのは聞いている」
「銀龍会以外、誰が侑李を連れ去ったりするんだ」
舌打ちして宏太はぐいっとグラスを飲み干した。
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しろくま(プロフ) - えみさん» えみ様、コメントありがとうございます。完結してしばらく経つお話ですが、楽しんでいただけていると、すごく嬉しいです★春から夏にかけて書いたホリッカーのあと、秋になってから始めたお話「あなたたちは誰だったの」連載中です。そちらにもぜひどうぞ（笑） (2018年10月31日 19時) (
レス) id: 58687bcc1e (このIDを非表示/違反報告)
えみ(プロフ) - ホリッカータウン、読了していませんが、すごく面白いです！設定も文章の書き方も読みやすいし、どんどん続きが気になります！でも、全部読んじゃうのが惜しいくらい面白いです。 (2018年10月31日 11時) (レス) id: 4f6a869bfd (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - ney-koさん» ney-ko様、今回も遊びに来ていただきありがとうございました。キュンキュンしていただいて、うれしいです〜。ショタやぶ…気に入っていただけてニヤニヤしちゃいます。ぜひまた遊びに来てくださーい★ (2018年8月22日 19時) (レス) id: 58687bcc1e (このIDを非表示/違反報告)
ney-ko(プロフ) - 完結、おめでとうございます！ハラハラドキドキなお話で胸もキュンキュンしまくりでした〜！やぶひか、くっついて良かったです(*´ `*)幼い薮くん設定、素敵ですねぇ。ご馳走様でしたttttt (2018年8月21日 23時) (レス) id: 279b6160ea (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - みるみるみるきーさん» みる様、最後までありがとうございました。松濤のぼっちゃま、あーりー（笑）お話しの中で実は一番気に入ったのがあーりーです★ただし、どう考えてもありいのでは終わらなかった…そのため、こんな終わり方ですわ〜。どっちもイケる…深く賛同いたします。 (2018年8月21日 0時) (レス) id: 58687bcc1e (このIDを非表示/違反報告)
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