子育て短編集【アイナナ】 (ページ43)

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バレンタインデーページ43

逢坂壮歌(そな)ちゃん 16歳(高1)
四葉由(ゆいと)くん 16歳(高1)

バレンタインデー

壮歌「あっ、由…」

いつも通りの通学。待ち合わせの場所で顔を合わせる2人は顔が赤い。

由「…はよ」

壮歌「えへへ…行こっか」

実はチョコレートを由に用意していた。もちろん、本命で。

けれども言い出せずに時間が過ぎる。

気持ちの整理をしてから渡そうと、鞄の中のチョコレートを深く押し込めた。

結局、昼休みも放課後も渡せず終い。

由「じゃあな、また明日」

ちょっとだけ寂しそうに笑った由の表情には気付かない。けれど足は動いていた。

咄嗟に、由のブレザーの袖をクイっと引く。

壮歌「…あ、」

一瞬驚いた表情を見せた由に、「好き」の一言が言えない。

由「あのさ！」

突然、由の声が響いた。

由「ち、チョコ…ねぇの？」

壮歌「え………！あ、うん。ある」

鞄の中の赤いラッピング袋。昨日頑張って作ったチョコレート。

壮歌「これ、ほんめ＿＿＿」

由「ごめん」

本命、と言おうとしたその時、言葉を被せられる。

壮歌「あ…私のなんかいらないよね……っ！」

恥ずかしい。勝手に期待して、本命だなんて。

鞄にチョコレートをしまおうとすると、腕を掴まれる。

由「違くて！…俺、壮歌が好きだから。告白は、俺からしたかったっつーか…」

壮歌「な、にそれ。馬鹿じゃないの」

迷わず由の胸に飛び込む。ぎこちなくも、由が腕を回してくれた。

由「あー、俺と付き合ってください」

壮歌「…バレンタインだからもうちょっとロマンチックに言って」

由「はぁあ!?…王様プリンよりもチョコよりも好きです、俺のチョコレートになって下さい」

大真面目のつもりなのだろうが、意味が分からなくてぷっと吹き出す。

壮歌「っふふ…いいよ、由だけのチョコレートになってあげる」

2人で笑い合う、バレンタインデー。

お互いが真っ赤な顔で帰宅するまで、あと3分。