子育て短編集【アイナナ】 (ページ22)

今日:18 hit、昨日:5 hit、合計:478,650 hit

虎於パパページ22

御堂士虎(しとろん)くん 18歳(高3)

A「ふぅ………」

ゆったりと紅茶を飲むけれども、ため息が零れる

士虎「母様、どうかなさられましたか」

御堂家の一人息子として立派に育てた士虎が、私の顔をうかがう。

A「いいえ、ごめんなさい。何もないの」

何でもない、なんて嘘だけれど…

士虎「そうですか、何かあればお申し付け下さいね」

ふわりと花を咲かせるような笑みを見せる士虎。

その笑顔は父親によく似ていた

虎於「ただいま」

A「あっ…おかえりなさい」

噂をすれば影で、ご当人が現れた。

ネクタイを片手で緩め、コートを私に預けてソファに沈み込む。

士虎「父様おかえりなさい。お疲れですか」

虎於「…ああ」

＿＿＿最近、愛想が尽きていると感じる夫。

ちょっと前までは『行ってきます』から『おかえりなさい』まで、キスをしてくれた。

ちょっと前まではずっと笑顔でいてくれた。

ちょっと前までは、こんなに香水の匂いはしなかった。

A「…虎於さん。少し、2人でお話したいのだけれど」

虎於「ん、いいぞ。…どうした」

気を利かせてくれた士虎が部屋を出る。

私の頭を撫でるその眼差しは優しいもので。

A「最近…隠し事をしていませんか」

虎於「……隠し事、か」

A「その…、香水の匂いがしたり、あの、」

き、きす………。

この呟きは虎於さんに聞こえただろうか。怖くて目をつぶる

虎於「…ふ、ははははは！」

突然笑い出した虎於さんにビックリして顔を上げた

虎於「確かに最近、お前には内緒にしてた事がある」

ほら、と私の手に握らせたのは小さな箱。

A「えっと、」

虎於「結婚、20年目だろ。何か贈りたくて女性タレントとかに

聞いて回ってたんだ。それで香水の匂いが付いたんだな」

A「ありがとうございます…」

安心と不安の解消で涙が浮かんでくる。けれどその涙は物理的に消えた。

虎於「キスくらい、いくらでもしてやる」

おでこに、目元に、頬に。

新婚に戻ったような感じがして嬉しかった。

すると、バン！と大きな音を立てて扉が開く。

士虎「母様、父様！仲直りはされ…」

虎於「こら、邪魔したな」

完全にタイミングを間違えた士虎を、2人で笑っていた。

仲直り、できましたよ

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
ひぃ…こんな感じでいいんですかね虎さん…

NEXTリクエストのあった三月くん！