弐佰参拾陸頁─両組織ノ困惑─ ページ10
特に何も予定の無い日は、目が覚めて布団から起き上がるという行為が最も億劫に感じる。
“今日も仕事かぁ”とか“朝の特大セールに行かなければ”などと思わなくて善い分いくらかマシだが、それでもこの時間帯はいつも憂鬱に思える。
そんな私が目を覚ましてまず初めに思ったのは“あぁ、まだ夢か”だった。
決して現実逃避をしている訳では無い。
...まぁ多少それもあるかもしれないが、私がそう思ったのは狭い視界に入った内装が見慣れないものだったからだ。
しかし全く知らないとも云いきれない。
何故なら不思議なことに昨日の事がぼんやりとしか思い出せなかった。
なんとかきっかけを掴もうとするも断片的にしか思い出せず、頭の中全体に靄がかかったような感覚に陥る。
『お酒が呑める年齢にはまだまだなんだけど...とりあえず首領に連絡を────』
と、現状報告の電話をかけようと重い躰を起こして気づく。
『......なんで私、こんなにぶかぶかの服着てるんだろ?』
明らかにサイズの合っていない服。
それは二回りほど大きく、本来寝心地の良さを重視している寝巻きが全く意味をなしていなかった。
知らない部屋にぶかぶかの服。
私の思考回路が変な性癖を持つ何者かに捕まったという終着点に辿り着く。
まぁ私に手枷も足枷も目隠しすらも無しとなると誘拐ではないと思うけど。
『だとしたら太宰の悪戯?いや、でも流石に服を着替えさせられたらそこで気付くし...』
上体を起こして辺りを見渡す。
木製のタンスやクローゼット、綺麗な花が咲いている植木鉢。
黄緑色のカーテンに、中くらいの本棚と至って一般的な一室。
軽く閉められたカーテンの隙間からは僅かに太陽の光が差し込んでいる。
そして枕元には携帯電話が置いてあった。
試しに電源ボタンを押してみると、現在の時刻と共にパスワードの入力画面が表示された。
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作者名:煉華 | 作成日時:2023年1月26日 23時