弐佰参拾肆頁─ト或ル訪問者 5─ ページ8
『敦君、大丈夫?気分悪くなってない?』
「...はい、大丈夫です」
壁の隅で座り込んでいた敦にAが声をかける。
まだ脳が混乱しているのか返答に間が空いたが顔色は悪くないように見えた。
『もし敦君が慰謝料を請求するなら、その額は何があっても全額払わせるけど』
「いえいえ、本当に大丈夫ですから!確かに最初は不気味で怖くて仕方がなかったですけど、途中からは寧ろ落ち着いて心地が善かったというか」
『...まぁ、敦君がそう云うなら。国木田さんも容赦無く請求していいですからね。怪我人は出ていないみたいだから私も必要以上に怒らないけど次は無いから』
「はい、過去最大級に凄く深く反省しています」
「...あの、二人はどのようなご関係で?友人というのは本当なんですか?」
まだ完全には警戒が解けないのか、敦は恐る恐るAに尋ねる。
頭の上に乗ったフルールにポコポコと軽く叩かれていた鈴奈はその問いに直ぐさま反応し胸を張った。
「それは勿論!嘘偽りのない事実だよ!」
『友人というか、昔からの付き合いで今も偶に会う関係というか』
微妙に食い違う両者の答え。
しかし仲が悪いというわけでは無いらしく、敦はほっと胸を撫で下ろす。
「だからあんな写真だったんですね」
『写真?何の話?』
「人探していう体で来たから一応顔写真を用意してて。はい、これだよ」
鈴奈は鞄から写真を取り出す。
しかしそれは彼等に見せた写真とは別のものだった。
『おー、懐かしい。これ五年前くらいに記念に撮ったやつかな。こんなのよく残してるね』
「え、その言い方だとAは残してないの!?ボクはこんなにも大事にしているのに!」
愚図る彼女にAは慣れた様子で、はいはいと軽く受け流す。
実際に十年ほど前から鈴奈は同じ調子であり、一々構っていてはとても時間が足りなかった。
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作者名:煉華 | 作成日時:2023年1月26日 23時