弐佰参拾壱頁─ト或ル訪問者 2─ ページ5
「あの、此方では人探しの依頼も受けているのですか?」
敦が運んだ湯呑みを女性は会釈して受け取る。
彼女はそれを手を暖めるように両手で持っていた。
「勿論受け付けております。本日のご要件は人探しということでしょうか?」
「はい。実は私、先日まで外国にいまして。それでこの前友人と“日本に帰ってきたらヨコハマで会おう”と約束していたのですが、その友人と連絡が取れなくなってしまい...」
「成程。その約束をしたのは
国木田は万年筆を片手に紙に依頼内容を書き記す。
組合との戦い後、初めての民間の依頼。
彼は絶対に失敗すまいと意気込んでいた。
「約束自体は二年程前です。確認の電話をしたのが一週間前。その時は何事もなく繋がり世間話も交えて終わったのですが、昨日今日とかけた電話は繋がりませんでした」
「そうですか。...では、こちらの紙に従い記入をお願いします。その御友人の顔写真があればより善いのですが」
「そうですね。少し待ってください」
女性は鞄の中から一冊のノートを取り出し、そこに挟まれていた写真を国木田に差し出す。
「この写真の右側に写っている女性です」
その写真は現像されてから随分と経っているのか少々色褪せていた。
そこに写っていたのは十歳ほどの少年一人と少女が二人。
中央には依頼者の女性だと思われる白髪の少女。
その左側には茶髪の少年、右側には黒髪の少女がいた。
「この子、もしかして...」
横で見ていた敦が黒髪の少女を指差す。
幼いながらもその容姿は彼等の知り合いによく似ていた。
国木田の表情が僅かに強張る。
「...失礼ですがこの御友人の名前をお聞きしても宜しいでしょうか」
「ふふっ。そんなこと聞かずとも既に貴方達の頭にはその名前が浮かんでいるのではないですか?急に心音が乱れ始めましたよ」
女性の纏う雰囲気が一転する。
眼鏡の奥の瞳が妖しく光る。
「申し遅れてごめんね。ボクの名前は川端 鈴奈。少し乱暴だけど君達のこと試させてもらうよ」
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作者名:煉華 | 作成日時:2023年1月26日 23時