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「スファレライトは、貴方が何不自由無しに、傷を作ることなく戦争に勝ち続けることが自分の存在意義だと考えていた様でしたので。彼はある程度知らせるべき相手を選んで私に教えてくれたのでしょう。大恩人だという”貴方のため”になら、どんな手段でも取る方でしたから…＿＿＿」
あとすこし何か言いかけて彼は言葉を切った。そして、言葉を探すように目を動かして、それから、完全に修復された横たわる新人に目を落として言った。
「そう、だからきっと、この彼も、自分を壊してでも会いたくて、それくらい貴方のことを大切に思っているんでしょうね。ですので、あまり責めないであげてください…」
『僕にそれほどまでして会いたいだって？ ありえない、ほとんどあったことも無いんだぞ』そう言ってやりたかったのだが、ルチルの表情と、横たわっている彼の何処か苦しげな表情を見て、言葉は暗闇の方に消えていってしまった。
弁解すると、僕にそこまでして会おうと試みたこの新人を責めている訳ではなかった。その手段も咎めるつもりは無い。ただ、僕は自分の体を軽率に傷つけてしまおうと試みる彼の心持ちに些かの許し難さを感じただけだった。
＿＿＿＿僕達は、死なない。
その身は永遠で、幾度となく砕けてもパーツさえ揃えば必ず甦る。それが僕らが普通の生物と違う部分。僕ら以外の生物たちの持ち得ない部分。だからこそ、僕達は自身を壊してはならない。諦めてはならない。そうしてしまえば、かつて僕達が与えられたこの特別な贈り物を捨ててしまうことと等しく、この腐ることも無い身体特有の『死』と同義である。
何よりも僕たちにはれっきとした心があり、仲間が誰の手であろうと傷ついてしまうのは我慢ならないのだ。これは、動物のように生殖器がなく、より多くの仲間を成すことができない、ごく少数な僕らであるからこそ、その悲しみや苦しみは大きい。
そう、この事をこの何も知らない新人に、3000年の時を生きた僕は、一番最初に教えてやらねばならなかったのだ。『自分を軽率に殺めるような意識を持ってはならない』と。気づかせてやらねばならなかったのだ。『僕は君が君を傷付けようとしてしまったことが、自分を犠牲にした心持ちが、悲しく、苦しかった』と。
無言で新人を見詰める僕をしばらく見つめて、白衣の彼は「今日はこの辺にしておきますね」と、ぎこちなく微笑んで去っていった。
僕と、横たわる彼の静寂が、夜に落ちた薄い暗闇を包んでいる。
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ワッさん+a(プロフ) - ベルモットさん» お久しぶりです！後半読んでくださったんですね…！文字数が多めなのでなかなか読み進めづらいのではないかと不安でしたが、とても安心しました…！数々の勿体ないお言葉ありがとうございます！今後の制作の上、とても励みになります！！ (2020年9月28日 19時) (
レス) id: 17ce48cdec (このIDを非表示/違反報告)
ベルモット - 恩着せがましかもしれませんが、実は私も個人的に、夢小説を投稿している身で、この小説を読み、語彙欲は必ず要ると再確認出来ました。尊敬します。 (2020年9月28日 2時) (レス) id: e8970a172e (このIDを非表示/違反報告)
ベルモット - お久しぶりです。後半の話を読みました。シンシャが嫉妬したり、夢主を心配する場面や感情の葛藤が丁寧に書かれていて凄いと重いました。 (2020年9月28日 2時) (レス) id: e8970a172e (このIDを非表示/違反報告)
ワッさん+a(プロフ) - ベルモットさん» 作品をお読み頂きありがとうございます！ 主人公の関係性などの設定にはかなり拘って制作しておりますので、その点に注目していただけたこと、とても嬉しく思います！ これからも少しずつにはなりますが、更新して行きますので、応援のほどよろしくお願い致します！！ (2020年8月26日 9時) (レス) id: 2ac34ed691 (このIDを非表示/違反報告)
ベルモット - ワッさん＋aさんの夢小説作品を読みました。夢主のキャラ設定が、すごく凝っていますね。元パートーとの関係性が好みでした。 (2020年8月26日 8時) (レス) id: e8970a172e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ワッさん | 作成日時：2019年1月8日 6時
