ADAPTER <ｱﾀﾞﾌﾟﾀｰ> (ページ32)

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「また失敗だ、笑えるだろ。あの人の言った通りだ、俺はまた失敗した…。あの人は何でも見えてるんだ、次俺がどんな行動をとって、どんな言葉をかけて、それで、どんな結果に帰結していくのか。でも今回はあと少しだった、手応えがあった、あと少しで手が届きそうだったんだ…」

　その声色は、少年にしては珍しく自嘲的だった。

「兄さん……」
「そうだ、思い出したぞ、あのアマだ…あの金色の目のあの女！彼奴が現れると何時も俺の交渉が狂う！大事な交渉だ、生まれてこの方初めてのやりたいことだってのに！」
「兄さん…」
「そもそもだ！！あの女、大して親しくもないくせをして俺の肩にべたべたと！馴れ馴れしいにも程があるじゃないか！寄りによってあんな…あんなのを協力者に据えるなんて、シャールさんは一体何を考えてんだか！」
「兄さん！！」

「なんだよ！？」そう叫んで両手を広げた“不良少年”に、ダークブロンドの青年は、皺の寄る眉間に手を当てつつ、重々しいため息を吐き、コンクリートの床に散らばった半透明の破片を見渡した。
「いつまでも子供じゃあるまいし、たまには“マトモな”兄貴らしく振舞ってみたらどうだい？これじゃあまるでどっちが弟なのか分かりやしないよ」両手を腰に当てて、説教をする優秀で優等生な弟の目線の先には、寝台の上で行儀悪く胡座をかく不良兄貴がこちらを睨み付けていた。

「…お前はここに帰ってくる度に生意気になって来るなぁ…アーノルド。ああ、わかってる、花瓶を割ったのは済まなかった、また弁償するから説教は後にしてくれよ」気だるげに頭をかくと、またドアの前に仁王立ちで立ち塞がる真面目な弟はわざわざ耳を澄まさずとも分かる、盛大なため息を吐いた。その狼狽を聞いて、意地の悪い笑みを浮かべたシモン少年は、あの黒髪のテロリストがやっていた様に、人差し指を立てて「それにな、お前が弟って言ってもたった一歳差だ、十六と十五を隔てる一年の経験の差なんて、長い目で見りゃあたかが知れてる。寧ろ、誰から見るにも、お前の方が余っ程兄貴らしいぜ」といった調子で弁舌する兄に、一瞬だけ呆れたように天井を見上げた弟は、「そうかもしれないけれど…」と、途方に暮れた調子で、青年らしくも、それにしては緩やかな肩を上下させた。
　

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