ADAPTER <ｱﾀﾞﾌﾟﾀｰ> (ページ26)

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本来の幼らしい少年の寝顔を見て、濡鴉の女が「可愛いものね」呟いた。その言葉に向かって、もう片方の人物は返事も見向きすらもしない。この態度に全く慣れたように、濡鴉の女は月の昇った窓の外を見上げ、「それにしても」と、少々懐疑的な顔を浮かべた。

「ハーブティでもてなす振りして、睡眠薬盛るなんて、なかなか貴方ってトんでるわ。このコ、次会った時きっとうるさいわよ。なんで睡眠薬なんて僕に盛ったんですかーって」

「次はない」

「いつもそう言ってるじゃない」

　暗闇の中に閉じ込められた十六の少年を、漆黒の若者は軽々と持ち上げてその部屋を出ていった。自動で主人の行先を照らすセンサランプの無い廊下の暗闇が、彼女達を悦として招き入れているかのようであった。シャールの漆黒が夜の影に溶けてゆく。

「それにしても、私ってどうしてこんなにもこのコに嫌われてしまっているのかしら…」

「さぁ、複雑なことは嫌いだ。特に子供の情動は理解し難い」

「あら、貴方に理解できないものってこの世にあるの…」

　抱えた少年の寝顔を見て、“シャール”は呟いた。

「あるさ…幾らでも」

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第一章完結