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「貴方が爆破テロを起こしている建物にはあるひとつの大きな関連性がある。近年増え続けるマフィアやギャング傘下の麻薬密売人の拠点ばかり、それも麻薬の大元締から円状に並んでいる拠点地へ正確に体制を崩すように攻め始めていますね。加えて、貴方は爆破する前の建築物から何らかの方法で善良な一般市民のみを誘導し、遠ざけている。ニュースや新聞に、犠牲者数が報道されて居ないのはそのためでしょう────。…そう、少なくとも僕はあなたの仕事が正しいと、そう思っているのです」
相手は毒も水も指すことなく、ただ黙って聞いていた。
「僕はその手伝いがしたい。貴方に世辞でも認められた、知力と忍耐力で。もう二度と、昔のような目に遭わない社会を作りたいんです。戦争も紛争も貧困も麻薬も暴力も、もう沢山だ…。だから僕は貴方に、僕自身を賭けたい」
少年の熱弁を聞いたシャールなる人物は、平静の顰め面に新たな皺を寄せ、更に分が悪そうに赤い手袋が覆う右手で、後頭部の髪を掻き回した。困惑しているのか、自分の考えはやはり正しかったのではと、一度は考えた少年であったが、この人物に限って、他人の言葉には動揺も憤怒も困惑も示さないのが相応しい。シモン少年がこの人物の後を追った先には、いつも全てが自分の予想の範疇で回っていると言いたげな、退屈そうで、どこか寂しい表情が待っていた。今日もそれは変わらず、孤児院の中では覚えも運動神経も優れていたシモン自身でさえ、変えられることは有り得ないと踏んでいた。
それから、癖のように髪を触った後、少年が紅色のハーブティーを啜るのを一瞥して、当人は前かがみに座り直し、熱のない声で返答した。否、正確にそれは、独り言だった。
「────昔、僕に君と同じことを言ってきた奴が、数人居た。その中でも、君と同じように何かしらの淡い期待と、熱意を込めて、協力を申し出てきたやつが三人ほど。その内の二人は二十歳前半頃の若い青年で、あとの一人もまだうら若く、頭のいい女だった」
ヒュノプスが歌うような、静寂に満ち満ちた声で。少年は眠気と疲労を帯びた、しかし熱意のある瞳でその話を聞いていた。
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作者名：ワッさん | 作者ホームページ：http://img.u.nosv.org/user/0301enmakun
作成日時：2021年4月10日 17時
