TYPE 0 ページ1
「力を貸してあげようか?」
これは───世界各国規模の大混沌から。
腐れ切った世の中から。
たった一人のちっぽけな『私』から始まる物語である。『私』が、あの時、あの瞬間、目の前に降り立った“一人の悪魔”の手を取った事より始まった、宛もなく、幸いもなく、祝福もなく、どうしようもない愚かな人間の物語。焼け焦げ灰となった瓦礫の中から、血の気のない真っ白な手がこちらに手を差し伸べてきた。そのたった数分の悪夢から、絶え間なく…
私は有り余るほどの人間を殺してきた。
──── 二千百五〇年、第三次世界大戦勃発。新式の化学兵器を駆使したこの三度目の、全世界を巻き込んだ戦争は、『地球破滅戦争《Earth destruction war》』と呼ばれ、世界各地の広大な地を焼き、幾万もの血を吸い上げ、後世の歴史家達の最高の研究材料となると同時に、人々の精神に大きな爪痕を残すこととなる。
その、三十二年後。絶望の世代を超えた、イタリア、フランス、そしてこの地イギリスを含むヨーロッパ諸国は、大昔に葬り去られた文化を見直そうと、各国の街並みは、最新の技術を丁重に、胎内にしまい込んだ都市へと姿を変貌させた。それは、宛ら『第二のルネッサンス』と呼ばれ、この思想は、ダンテ・オッカムという思想家から、波紋のように、ヨーロッパ各地を侵食して行った。都市部と地方の貧富の大きな差。人より遥かに優れた人工知能による急速な職の減少。それによって、人間の、自分自身の、存在価値を脅かされる若者や、得体の知れない機械の群れに埋め尽くされた、反逆の可能性と、今までにない暴発的な戦争再来への恐怖を覚える老人までに広がりを見せ、瞬く間に人々の精神を一〇〇年、二〇〇年、三〇〇年と、大規模に若年化させた。それはまさに、十八世紀、十九世紀の発展途上国のヨーロッパ諸国を思わせるような、誰の目にも明らかな『進化の否定』であった。急激な進化を拒絶した果ての、未熟なAIが支配する情報ネットワーク社会、それが、『第二のルネッサンス』の本懐である。
そこには────戦争の恐怖と、高度AIによる進化と支配への恐怖が交差するこの社会には────過去、地球を壊滅寸前までに追い込んだAIの残留物と共に、“戦争の残党者”達が蔓延っていた。
人々は後に、彼らをこう呼ぶ事となる。
『
·
8人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ワッさん | 作者ホームページ:http://img.u.nosv.org/user/0301enmakun
作成日時:2021年4月10日 17時