小説家、計劃 4 ページ6
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其処は地下室だった。
階段を降りた先には、たった一部屋がある。黒服の男は其処で立ち止まり、不思議に思う中原も立ち止まる。男が中原の眼前から退いた。
念の為、ノックする。「ポートマフィアが幹部中原だ」と、云うと、返事を待つまでも無く黒服が扉を開けた。そして、早々と何処かへ去って行く。
───其処は、青白い光に包まれた薄暗い部屋だった。モノクロの箪笥に、整頓された本棚、壁掛けの時計、其れと、五台以上にも及ぶ電子板が配置されていた。
そして、妬けに見覚えのある後ろ姿。
────目に余る程、美しい女が居た。
唖然と呟いた。「御前…何故此処に…」愕然とした中原の目は一時も女の姿から離れようとしない。そうして、振り返った女の顔は矢張り、何時か街で会った『彼の女』そのモノだった。忘れはしていない、間違いないのだ。髪の天辺から、足に至る迄何もかもが白い『彼の女』。
女は、申し訳なさそうに美しく微笑して云う。
「驚かせたならば、済みません。
私が『伊藤計劃』。ポートマフィア幹部 中原中也様、招待状に習ってお越し下さった事を心より感謝して居ります。先日、其方へ送った贈呈品は喜んで頂けたでしょうか…」
「質問に答えろ」本意では無かったが、少しと声を荒らげてみる。ピクリと女の肩が跳ね、遣り過ぎたかと、後悔する。
「本当に申し訳ないと思っています。特に探りを入れていた積りは有りません。情報屋の性質通り、私は人と接するのが苦手で、街で見た時、貴方になら話せるのでは無いかと思っての事です…」
縮こまるように話す女を、見ては居られない。天才と謳われていたと云えど、蓋を空ければこんなにも普通の女性では無いかと、心做しか中原は安堵していた。
「否、善い。首領も封筒の中身は喜んでいた。そんな凄まじい情報を提供した奴を恨む気は更々無ェ」
其れを聞いた『伊藤計劃』は、有り得ない程に嬉しそうに笑っていた。
「中原さんは優しい人なんですね。客人が貴方で善かった────」
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ワッさん+a(プロフ) - あひゃこさん» いえいえ!まさか紹介して頂けるなんて夢にも思いませんでしたから!こちらこそ、ずっと応援してます! (2018年6月12日 19時) (レス) id: 0cdcac71cf (このIDを非表示/違反報告)
あひゃこ(プロフ) - ワッさん+aさん» 承諾頂きありがとうございます こちらこそ、このような素敵な作品を私の作品で紹介できて大変嬉しいです^^* 私の新作である 生前手記 という作品に載せさせて頂きました これからも応援しています (2018年6月12日 18時) (レス) id: 782bc5610f (このIDを非表示/違反報告)
ワッさん+a(プロフ) - あひゃこさん» おおおわっ!良いのですかっそんなっ!有難うございますっ!いや、迷惑だなんてちっともっ!寧ろ光栄と言うか、願ってもないお話です!是非此方からもお願い致しますっ!! (2018年6月12日 18時) (レス) id: 0cdcac71cf (このIDを非表示/違反報告)
あひゃこ(プロフ) - ワッさん+aさん» そうなのですね こちらこそいつも閲覧頂きありがとうございます ご迷惑でなければ、是非この作品を沢山の方々に閲覧してほしいという私の思いがありまして… 作者様さえよろしければ、是非私の作品でこの作品を紹介させて頂きたいです(><) (2018年6月12日 8時) (レス) id: 782bc5610f (このIDを非表示/違反報告)
ワッさん+a(プロフ) - あひゃこさん» 励みになるコメントを有難うございます!細やかで僕も特に気を使っている部分に目をつけて頂いて嬉しい限りです!之はご期待に答えて更新せねばっ!それと、僕もあひゃこさんの作品は愛読させて頂いて居ります!!素敵な作品が多く、何時も目を見張るばかりです! (2018年6月11日 17時) (レス) id: 0cdcac71cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ワッさん+a | 作成日時:2018年5月27日 21時