狂乱の想い 1 ページ16
´
「そう…」
その後、彼女は中原の背に背を向けて暫く、何も云わなかった。何も言えなかったのかも知れない。一体此の背中に何を云ったらいいのか判らなかったのかも知れない。どれだけ時間が掛かったか、何か重いもので塞がれたように口を開かなかったかったAが云った。
「中也さんって私の何処が好きなの?」在り来りな質問に張り詰めた空気が緩み、思わず溜息が出る。
「御前…この状況で善く訊けるな」
「生憎、空気が読めない性格なんだよ。其れに、理由を云ったって別に減る物じゃない。
それでどうなのかな…」
少し考えてから口を開いた。「大したモンじゃねェよ。只──」
「只の一目惚れだ。初めて見た時の手前の笑顔が、あれは今までに無い位に綺麗だった。それだけだ」
「小説は?」一呼吸おいて、跳ねるような声がした。まるで年上に語り掛ける子供のような。少し甲高い少年の声だ。
殆ど反射的に声がした方向へと中原の瞳が動く。Aの背中に自然と目が行き、身体が其方へと傾いた。
「は?」
「私の書いた小説、読んでくれた?」
「ん、まぁ、少しな…」実を云えば、全く読んでいない。抑、本を読む習慣もなければ、幹部の肩書きを背負った多忙さで時間も無い。そういう訳で、曖昧に返すとAが苦笑した。
「別に、読んでないなら其れで善いんだよ。て云うか、その反応は明らかに読んでないでしょ」
「嗚呼、もう判った。読んでねぇよ」
「正直で宜しい……其れで、ほんとに私の事何も知らないんだね」
「そう云う手前は何処まで知ってる。情報屋だろ、マフィアの内情やら、幹部級の人員ぐらい知ってんじゃねぇのか?」
少し間を置いてAが応えた。
「知ってるよ。もっと云うとそれだけじゃない。武器の保持数、セキュリティコード、下級構成員から中堅の人間、準幹部、幹部の異能力や大抵の配置、生い立ち、死者数。大半の情報は把握してるよ」
「マジか」
「まじまじ」くすりと静かな笑い声。その後、落ち着かせるようにゆっくりと溜息を吐いて、中原の方を振り返った。
「貴方の事も善く知ってるよ」
52人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ワッさん+a(プロフ) - あひゃこさん» いえいえ!まさか紹介して頂けるなんて夢にも思いませんでしたから!こちらこそ、ずっと応援してます! (2018年6月12日 19時) (レス) id: 0cdcac71cf (このIDを非表示/違反報告)
あひゃこ(プロフ) - ワッさん+aさん» 承諾頂きありがとうございます こちらこそ、このような素敵な作品を私の作品で紹介できて大変嬉しいです^^* 私の新作である 生前手記 という作品に載せさせて頂きました これからも応援しています (2018年6月12日 18時) (レス) id: 782bc5610f (このIDを非表示/違反報告)
ワッさん+a(プロフ) - あひゃこさん» おおおわっ!良いのですかっそんなっ!有難うございますっ!いや、迷惑だなんてちっともっ!寧ろ光栄と言うか、願ってもないお話です!是非此方からもお願い致しますっ!! (2018年6月12日 18時) (レス) id: 0cdcac71cf (このIDを非表示/違反報告)
あひゃこ(プロフ) - ワッさん+aさん» そうなのですね こちらこそいつも閲覧頂きありがとうございます ご迷惑でなければ、是非この作品を沢山の方々に閲覧してほしいという私の思いがありまして… 作者様さえよろしければ、是非私の作品でこの作品を紹介させて頂きたいです(><) (2018年6月12日 8時) (レス) id: 782bc5610f (このIDを非表示/違反報告)
ワッさん+a(プロフ) - あひゃこさん» 励みになるコメントを有難うございます!細やかで僕も特に気を使っている部分に目をつけて頂いて嬉しい限りです!之はご期待に答えて更新せねばっ!それと、僕もあひゃこさんの作品は愛読させて頂いて居ります!!素敵な作品が多く、何時も目を見張るばかりです! (2018年6月11日 17時) (レス) id: 0cdcac71cf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ワッさん+a | 作成日時:2018年5月27日 21時