第十二話 ページ12
コナンくんとカウンター席に座り、カウンターを挟んだ向かいには降谷さんという尋問スタイルが出来上がってしまった。
しかも、運悪く、今はお客さんは私たちだけしかおらず、梓さんは買い出しに行っているみたいで店員も降谷さんだけだった。
「急に涙を流されたので驚きました。どこかでお会いしたことありましたか?」
『いえ、初対面です。ただ、私のすごく大切な知人に似ていたものですから…』
「あれ?Aお姉さん、記憶を取り戻したの?!」
『うーん…残念ながらその人に関する記憶を断片的に思い出せただけなの…』
コナンくんは少し考え込む仕草を見せた。
私の言ったことは嘘とは言いきれない。
まだ、完全に自分のことを思い出した訳では無い。
ただ、降谷さんを慕う自分、警察官だった自分を思い出すことができた。
服の中に隠れている警察手帳に愛着が湧いた。
「そっかぁ…やっぱりAお姉さんは、なにかきっかけがあれば、記憶が取り戻せるんだね」
『うん…多分。あ、あの…すみません。ただでさえ、急に泣き出して、その上似ている方がいると言われるのも不愉快でしたよね』
「いえいえ、世の中には三人も容姿が似ている人がいると言われていますし、不愉快だなんてことありませんよ」
「でも、安室さんに似ているってことは、すごーくかっこいい人なんだね!ぼく、興味あるなぁ」
『これは、ちょっと恥ずかしい話だから秘密…コナンくんがもっと大きくなったら話してあげる』
残念だななんて言いながら肩を落としている少年を可愛いとは思うが…これ以上、この話を続けられるとボロが出そうで怖い…
工藤くんが少年という武器で聞いてくるのだから、こちらも少年という見た目を有効活用する言い訳をさせて貰った。
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作者名:海扇 | 作成日時:2019年7月18日 17時