第十一話 ページ11
「ほら、Aさん入ってみようよ!」
『え、、ああ、コナンくんっ、』
コナンくんは足早に店内に入ってしまい、私も仕方なくコナンくんのあとに続いた。
そう、ここには、確かあの人がいる。
「こんにちは、コナンくん」
『こんにちはー』
「あれ、そちらの女性は、はじめましてですね」
ブロンドの髪に、褐色の肌、整った顔立ち。
ああ、安室透だ。
いや、降谷零さんだ…
あ、私、この人のことが、好きだったな。
とっても推していた。
警察官として、日本のために必死に頑張る姿が輝いていた。
どんなに自分が孤独でボロボロになっても、信念を曲げずに突き進む姿が眩しかった。
…そう、私も警察官で、この人みたいになりたいって思ってた。
彼と目が合った途端、自分が警察官として働いていた記憶が急に流れ込んできた。
私も、潜入捜査官だった…
キャバ嬢になったり、OLになったり、様々な人物になりかわり、時には悪行を強いられる日もあった。
これが警察のやる仕事なのか…と、自分の仕事の意義や自分自身を見失いそうになる毎日だった。
とてつもなく忙しいなか、たまにみる名探偵コナンのアニメが私の癒しだった。
たとえ、フィクション、アニメの中の人物だとしても、私にとって降谷さんは特別だった。
親しい人間関係は作れず、家族とも断絶状態だった私にとって、道標となってくれ、潜入捜査官の誇りを忘れずにいられる存在だった。
「大丈夫ですか…?」
「Aお姉さん、どうしたのっ?!」
ふと、彼らの声が耳に入り、一気に現実世界に呼び戻される。
あかん、私、どれくらいの時間無言で考え込んでしまってたんだろう…
また、怪しい人物ファクターを増やしてしまった…
「なぜ、泣いているんですか…?」
『え?』
私が泣いているだと?!
思わず、頬に手をやると、濡れていて…
全く無自覚で泣いていた。
『す、すみません!!急に泣いてしまって…びっくりしましたよね…?もう、大丈夫ですから』
突然、自分のことを思い出して…尚且つ、彼に会えたという奇跡。
つい、感極まってしまった。
潜入捜査官として、有るまじき事態だなぁ…と思いつつ、私にとって神同然の降谷さんに会えたのだから仕方ないかと諦めた。
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作者名:海扇 | 作成日時:2019年7月18日 17時