恋風乱舞 2nd【ars M.A】 (ページ35)

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70.オネ・ダリ。ページ35

週末、Aちゃんが部屋にやって来た。

いつものように駅からのLINEで起きてモソモソしてる内に、鍵の開く音がする。

「...せんぱーい...」

そしてやっぱり、遠慮がちな声。

ベッドから出て、玄関まで彼女を出迎える。

「おはよ。いらっしゃい」
「はい、おはようございます」
「フフッ」

とりあえず、その場でギューってハグ。
これくらいなら、Aちゃんもガチガチにならなくなって来た。
ふわりと背中に彼女の両手が回って来る。

「今日は何する？」
「んー...先輩は何したいですか？」
「俺に訊いちゃって良いの？」
「え？」
「Aちゃんが恥ずかしがるコト言うよ？」
「えっ...！？あっ、じゃあっ...えっと、どうしよう...」

何か必死にやりたい事を探してるっぽいAちゃんの身体を、さっきより強くギュウってする。

「うそうそ！俺、ちょっと欲しい服あるから見に行っても良い？」
「あ...はい！お買い物ですね！」

ちょっとだけ身体を離して「あ、安心してる」って笑ったら、彼女もヘヘッて笑った。

そのまま、一緒に部屋に戻る。

「あ、先輩」
「ん？」

ベッドに腰掛けた俺の隣に座ったAちゃんが、ちょっと目を丸くした。

「髪、短くなってますね！」
「あ、そうなの。似合ってる？」
「はい！...可愛い」
「可愛い？」
「あっ！ごめんなさい！男の人に可愛いって失礼ですよね！？」
「アハハッ！ううん、嬉しいよ？」

『可愛い』って言ってる君の方が100万倍可愛いけど！なんつって！

「まさか自分で切ったんですか？」
「それが出来たら良いんだけどね！クラスメイトに切って貰ったの」
「じゃあ、まだ美容師さんじゃない人が切ったんですか？凄い！」
「うん。ナナって子なんだけどさ、すっげぇ上手いんだよね」

俺の頭を見てたAちゃんの視線が、俺の目に下りて来た。

「女の人...ですか？」
「え？うん、そうだけど...あ、でも美容師さんになる子だから！全然、変なアレとか無いから！」

変なアレって何だよ、って自分で思ったけど別にやましくないし隠す方が怪しい感じだし。

「大丈夫だよ？俺、他の女の子に揺れる程の余裕無いもん。頭ん中、Aちゃんでいっぱいなのに。どうしてくれんの？」
「え...どう...って...」

真っ赤になってる彼女にキスして、クスっと笑い合う。

「先輩...お願いがあるんですけど...」
「ん？なぁに？」
「...髪、編んで貰っても良いですか？」

可愛いオネダリ。

もちろん返事は「喜んで」だよ。