恋風乱舞 2nd【ars M.A】 (ページ32)

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67.シュ・シュ。ページ32

夏休みは、斗真さんの店で夜バイトして、夏だけの短期で近所のスーパーで早朝の納品バイトもした。
パートのおばちゃん達にやたらモテた。

空いてる日はAちゃんと会って、花火は無かったけど俺の地元のお祭りに一緒に行った。

念願の浴衣姿を隣で見れたし、髪も編み込んであげられたし(編み込みしてあげてる最中にムラムラしちゃって襲ったのは内緒)リンゴ飴食べてる可愛い横顔も見れたし。

あの日、たっくんに感じたモヤモヤはスッカリ無くなってた。
だって、やっぱりAちゃんは俺の子だし。

学校が別々になったって、毎日は会えなくたって、お互いがお互いを「好き」って思ってたら大丈夫なんだ。

・

「髪、切りたいー...」

夏休みが終わって始まった学校。

休憩時間に、伸びた前髪をギューっと引っ張りながら呟くとシュンスケが「俺が切ってやろうか？」って言う。

「えー...やだよ」
「何で！俺だって美容師目指してるんですけど！」
「シュンスケの練習台になる位なら、ナナに切って貰う」

同級生の中でも、ナナは親も美容師だから器用さやセンスが遺伝してるのかダントツに成績が良い。

「ねぇ、ナナー」

ちょっと離れた席に座って友達と喋ってるナナに声を掛けると、ちょっと面倒臭そうにこっちを見た。
今日は完璧なバランスのお団子頭。

「何ー？」
「髪、切って欲しい」
「まーくんの？」
「うん」

ナナがこっちに来て、俺の髪をサワサワと触る。

「確かに伸びたね」
「でしょー？もう、前髪が目に入って邪魔で邪魔で」
「別に良いけど...どこで切るの？」
「ここで良いよ、ここで切っちゃって」

切りたいと思ったら、すぐに切りたくなった。

思い立ったが吉日！って言うし。

「じゃあ、放課後ね」
「やった！やっとスッキリできるー！」

とりあえず今は長くなった邪魔な前髪を、シュシュで結ぶ。

「前から思ってたんだけどそのシュシュ女子力高いよね。まーくん自分で買ったの？」

ナナが俺のチョンマゲを見ながら、首を傾げた。

「んーん、彼女が彼女になる前にくれたの。輪ゴムで結んでたら、痛そうだからって」
「彼女になる前？」
「そ。俺が片想いしてた頃」

まだ暑かった、そうだ、今くらいの時期。

夏休みが終わった頃。

休憩でオレンジジュース買いに行って、飲みながら歩いてたら前からAちゃんが歩いて来てポニーテールにドキドキしたのを覚えてる。

間接キスさせようとして渡したジュース、そう言えば飲んでくれたのかな。