恋風乱舞 2nd【ars M.A】 (ページ29)

今日:15 hit、昨日:0 hit、合計:675,130 hit

64.サッキノ・ヘンジ。ページ29

お互い、何も言わなくて

俺は夜道を歩いてて

Aちゃんは部屋に居るのかなー...と思って夜空を見上げたら

「あっ！流れ星っ！」

ヒューンって、星が流れた

...気がするんだけど、本物だったのかな。
見間違いかもしんないけど。

「先輩も見ましたか！？」
「えっ！？Aちゃんも見た！？」
「はいっ！今、ベランダに居るんです」
「そうなんだ。同じ空、見てたんだね」

花火は一緒に見れなかったけど、流れ星は一緒に見れた。

花火の時と同じで隣には居ないけど、今はちゃんとAちゃんの存在を感じてるもん。

「あー、せっかくなのにお願い事は出来なかったなー」
「先輩、何をお願いしたいんですか？」
「えっ......内緒っ！」
「えー、ケチー」

クスクス笑ってる彼女の笑い声が、何だかくすぐったい。

俺の願いは、こうやって君と同じ時間をずっとずっと過ごせますように...だよ。
言わないけどね！
言えないよ！ハズいっ！

「あ...先輩」
「ん？」

夜風が気持ち良い。
風で揺れた前髪が目に当たる。

そろそろ髪、切らなきゃなー...。

「私も...です」
「何が？」
「さっきの...返事...」
「さっきの......って...あっ！？」

『好きだよ』だよね！？
さっきのって、それだよね！？

「嬉しいけど何かズルいそれ。Aちゃん」
「ズルい...？」
「私もー、って。ちゃんとした言葉は？」
「えっ！？でもっ...でも先輩だって文字だったもん！」

焦ってんのか、珍しくタメ口になったAちゃんに胸キュン。

「次会った時、絶対言わせちゃうからねー！」
「...もう...言いませんよー。フフッ」
「声、聴けて良かった」
「......え...」

もうすぐ、家に着く。

俺の足音だけが、夜道にパコパコ響く。

「声が聴きたかったから、電話したんだよ。なんて、ベタな事言っちゃいそう...ってか、言っちゃった」

アハッて笑ったら、電話の向こうのAちゃんはちょっと黙って

「ベタな事が、一番嬉しいです...」

って、小さな声で言った。

声が聴けただけで、耳から幸せが流れ込んで来るんだ。

だったらさ、次に直接声を聴いたら俺の耳は蕩けて落ちちゃうんじゃないの？

そんなコト、考えてたらやっぱりすぐに会いたくなって

次の日、朝からAちゃんち行った。

顔見た瞬間に抱きしめて

「Aちゃん、俺に言いたいコト無い？」
「...えっ...あ...」
「ん？」
「私も...先輩が...」

聴きたかったあの言葉を、ちょっと強制的に言わせた。