恋風乱舞 2nd【ars M.A】 (ページ25)

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60.コットン・キャンディー。ページ25

変なコトって何だよ...と溜息混じりに言い返して電話を切った。

スマホをジーンズのポケットに突っ込んで、ナナの背中に呼びかける。

「ナナー、帰ろっか」

振り返ったナナが「うん」って頷いた。

駅までの道を歩いてると、ナナはやっぱり綿菓子を持ってる子を目で追ってる。

「フフッ。ナナ、そんなに綿菓子食べたいの？」
「えっ！？何でっ！？」
「だって、さっきからずーっと綿菓子見てるから。好きなの？」
「好きって言うか...親がね、ちょっと厳しくって虫歯になるからーって買って貰えなかったの」

眉間に皺を寄せて、微妙な表情。

「だからちょっと、憧れ？お祭りで綿菓子食べるの、夢ってゆーか...」

ナナが自分の発言に「大袈裟かっ！」って突っ込んで、タハッて笑った。

「じゃ、俺が買ってあげよっか？」

調度、そこに綿菓子の屋台がある。

「え...？まーく...」
「ちょっと、待っててね！」

屋台に走り寄ると、甘い香り。

「おっちゃん、綿菓子ちょーだい！」
「一個で良いか？」
「うん、一個で良い。でっかくしてね！」

ちょっと強面のおっちゃんが、ふわふわと可愛い綿菓子を作って行く。

「はいよ、兄ちゃん男前だからサービスだ！通常の1.5倍！」
「マジでー！？ありがとー！」

本当に1.5倍かどうかは分かんないけど。
だって通常サイズ知らないもん。
でも、大きい。大きい綿の塊。

その大きな綿菓子を持って、ナナの元に戻る。

「お待たせー」
「おっきー！」
「何かね、サービスしてくれたらしいよ。俺が男前だから」
「アハハッ、男前で得したね！」
「はい、どーぞ」

綿菓子をナナに渡すと、嬉しそうに笑った顔が子供みたい。

「お誕生日、おめでと」
「...え...？」
「知らなかったからさ、こんなプレゼントしか無くってごめんね？」
「......ううん、嬉しい。凄く...」

知ってたら、ケーキとか買って来たんだけどな。
あ、ケーキなんてこんな人混みに持って来たら潰されちゃうか。
じゃあ、綿菓子で正解。
災い転じて福となす？合ってる？

「おいしい...」

綿菓子を一口食べたナナが、呟いた。

「そ？良かった」
「まーくんも食べる？」
「ナナのだから全部食べて良いよ」
「美味しいのに？こーんなに甘くて美味しいのに？いらないの？」

俺の鼻先にチラつかされる綿菓子の甘い匂いの誘惑に、負けそう。

「...一口貰おっかな」

負けた。

ナナが差し出してる綿菓子をパクンと一口食べたら

口の中で飴は一瞬で溶けて消えてった。