百三十 ページ30
『何…言ってんの?』
「こりゃ本音だ、冗談でもなんでもねェ」
言葉が出なかった。
そんな感じ一切なかったしなんでまたこんな急にと返す言葉が見当たらなくて視線を落とした。
頭に落とされた手は優しく髪を梳く。そっと視線を上げれば柔らかに笑った総悟くん。
「頷けなんざ言わねェ。俺ァお前が幸せになれるとこにいてくれりゃァいいんでィ」
『総悟くん…』
ーー素直に頷けなかった。
この手で奪ってきた命は数知れず、この体に浴びた赤もどれくらいかなんて覚えちゃいない。……それに私は人殺しの娘だ、そして私自身も法の下で人を斬ってはいるが第三者からすれば人殺しと変わりない。
そんな私が、汚い私が綺麗なものに手を伸ばすなんて。
「てめェは綺麗だ」
『……は?』
「俺達ゃみんなもう同じもん抱えてんだ。今更綺麗も汚いもあるか」
『……』
「A、お前は幸せになれ」
総悟くんの目は今迄で一番優しく撫でる手も温かくて視界が滲んだ。ギュッと布団を握ればぽろぽろと涙が溢れた。
ドSの性悪なんて言葉今は似合わない。
『優しいとか…っ気持ち悪』
「今くれェは素直に受け取りやがれ」
『…ありがと』
いつからか、十四郎ちゃんと総悟くんに対して埋められない気持ちの差ができた。それがいつなのか……考えてもそれはでてこない。
過ごしていく日々の中で自然と芽生えたそれは要らないものだと気付かぬうちに捨ててたみたい。
だって自覚したら堰を切ったように溢れて仕方ない。
こんなもん私の心のどこにあったんだって笑いそうになるくらい、それくらいの気持ちだから。
『総悟くん』
「なんでィ」
ーーーもう、
『ごめんね、私…』
誤魔化すのも逃げるのも終わり。
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作者名:翡翠 | 作成日時:2018年10月13日 21時