百二十五 ページ25
何が起きたのか、正直覚えてない。
長い眠りの中にいたような、そうでもないような。…ただその中で覚えてるのはこの手に身内の血を被ったこと。
「A!」
開けた視界は真っ白だった。声がした方へ顔を向ければ総悟くんがいつもとはかけ離れた顔をしていた。
手を伸ばせばギュッとそれを掴まれ「大丈夫か?」と。
『…どれくらい、寝てた?』
「二週間」
思っていたより寝過ぎていたらしい。
病室が途端煩くなる。誰かが呼んだらしい先生と看護師さんに体調確認などをされる。ザキちゃんと近藤さんも居たらしく二人は心底ホッとしたような顔をしていた。
何も異常がないことがわかると看護師さんは出て行ったが先生は難しそうな顔をしたまま動かない。
『右目、見えないんですよね?』
「…いえ、見えないわけじゃありません」
覚悟していた返事とは別のものが返ってきた。その為声が一言も出なかった。
それは私だけでなく、近藤さん達も同じだったようで。
「先生、そらァどういうことですか?」
「水瀬さんの角膜は損傷が激しく現在は見えぬ状態なのですがドナーが見つかれば手術し、見えるようにすることは可能かと…」
(……嗚呼、そういうこと)
近藤さん達は暗い顔をしている。
ドナーなんて簡単に見つかるのか、それが三人の思うところだろう。それは私も思っている。…けれどそれに頼る他ない。
先生にお願いしますとだけ告げれば探し出しますと言って病室を後にした。
『暫く、刀は握れそうにありませんね』
「A…すまねェ」
『なんで近藤さんが謝るんですか!』
大丈夫だというように笑顔を作るが三人は複雑そうな表情を浮かべるだけだった。
129人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:翡翠 | 作成日時:2018年10月13日 21時