君とユウガオと僕

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「剣持先輩」
「ん？」
「今日は怒っちゃってすみません」
「…怒ったっけ？」
「怒りましたよ。朝」
「…あー、そんなこと言ってたかもね」



最初の敬語キャラはもうない剣持先輩。
電車に揺られながら、静かに話す。

電車をおりたあとは沈黙が続くけど、別に不快じゃない。むしろ、心地よかった。




「…不破くんの、どういうところが好きだった？」




沈黙を切った剣持先輩は突然そんなことを言った。

傷を抉りたいんだろうか




「よく笑うところ、」




先輩が頷く




「あと、笑顔が可愛いって言ってくれるところ」




また頷く




「頑張ったメイクとか、洋服とかヘアセットとかを褒めてくれるところ」




また頷く




「優しいところ」




私の頬を滑り落ちる雫を、剣持先輩は人差し指で拭った。




「じゃあ、嫌いなところは？」




今度はポケットから出したハンカチをぽんぽんと肌を傷つけないように拭いてくれた




「…適当なところ、」




クスッと笑って、頷く




「私と剣持先輩を仲がいいって言うところ」




少しムスッとした




「私を、かわいいって言うところ」




「優しく笑うところ」




「好きじゃない女の子と水族館デートに行っちゃうところ」




「思わせぶりなところ」







「全部大好きで、大嫌いです。」



私が笑ってそう言ったのは、私の初恋の人じゃない。私を可愛がってくれている先輩。

剣持先輩には悪いけど、

この台詞を不破先輩に言ってみたかった。


きっと困らせてしまうけど、



言えたら、きっとこんなに苦しくなかったから。



「告白は？」
「しません」
「…そっか」



悲しそうに笑う剣持先輩。



「なんでそんなに悲しそうなんですか？」
「…なんでだろうね」







「なん、ですかそれ」
「なんだろうね」



そう言って、クスッと笑った。

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