菫と果実《Kei.i》 (ページ30)

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・二十九ページ30

慧「そんなことが」

貴方「はい、もう生きているのか

そうではないのかもわかりません、」

慧「でもその菫さん？素敵な人なんだね」

貴方「はい、誰よりも、、、

魅力的な人でした」

静まる一室

バクバクと心臓が鳴り響く

貴方「婚約、、、

が決まったんですか？、」

慧「うん、」

貴方「私も、

わっちも、身請けが決まりんした」

慧「え、？」

慧「それ、ほんとに？」

貴方「はい、馴染みのお客様から」

互いに言葉は震えていて

次第に手も震えてくる

慧「Aは、それでいいの？」

いい訳がない

私は愛したいと思った人と

あなたと

生涯を共にしたい

貴方「慧様だって」

慧「そうだね、人のこと言えない、

契約結婚なんて」

慧「俺はね、

一緒にいたいと思う人がいるんだ」

貴方「え、」

もうやめて欲しかった

これ以上苦しい思いをしたくなかった

もう失望なんて

したくなかった

貴方「そうでありんすか」

慧「なんでそんな悲しそうなの？」

貴方「え、

何をおっしゃいますか？

わっちは何も、」

慧「嘘つき、

じゃあなんで泣いてんのさ」

言われて気づく頬の濡れた感触

貴方「それは、」

慧「俺、期待しちゃうよ？」

貴方「何を？」

そんなこと言われれば私だって期待してしまうのに

あなたは罪な人だ

慧「A、愛してるよ」

あなたとただ幸せな生涯を過ごせたなら

どんなにいいだろう